カップルが互いにいつもハッピーでいられれば何よりですが、そうは問屋が卸しません。彼氏・彼女・パートナーであるのに、いや、そうであるがゆえに、その相手に対して殊更にムカつきやすくなったりもします。相手がそれだけ特別な存在だからでしょうが、このへんが何ともややこしいのです。たとえば二人が共に楽しみにしていた休日。「どう過ごそうか?」と相手に訊かれ、「二人で過ごせれば何でもいい」と返事。けれども実際の過ごし方が気に入らず、「もっと気を利かせて欲しかった」などとムカつく。また、こちらのそのムカつく姿を目の当たりにして、相手もムカつく。そしていつの間にか二人はひどく険悪な雰囲気になり、「別れた方がよいかも」との考えに拍車がかかる、などなど。

「ムカつく」だけではまずい

 ムカつくのがいけないという道徳論を述べたいのではありません。ただ、ムカつくだけで終わると、①自分が何にどうムカついているのか、自分のその気持ちの出どころは何なのかなどは、わからないままとなります。
 もし、カップルなのだから言葉にしなくても相手はこちらの気持ちをわかってくれて当然と思いこんでいるなら、それはその考え自体に無理があります。あるいは、二人の関係に波風が立ってはいけないと本心を押し殺すようなことを続けていれば、苦しさが増幅し、些細なことでもムカつきやすくなるのは当然でしょう。
 そして②「相手が〇〇してくれない」などと、相手にすべての非があると決めつけたり、逆に「相手に期待した自分がバカだった」などと一方的に自責を強めたりもしやすいものです。この②の二つは一見、正反対なようですが、〈二人の関係を二人で一緒によきものにしていこうとの姿勢〉が乏しい点ではよく似ています。

「ムカつく」に対する心理教育的アプローチ

 ではどうしたらよいのでしょうか? 
 上記の①については、⑴自分が相手に何を伝えたいのか、わかってほしいと望んでいることは何かなどを確かめ、⑵それを相手にわかりやすく伝えてみる練習が有効となります。
 この⑴や⑵は紙に書いたり、誰か信頼できる人に話してみたりするのもよいでしょう。⑶そして、それを伝えたとしても相手がそれに応じてくれるとは限らないことも予め認識しておくとよいでしょう。相手にもいろいろな気持ちやその時々の状況もありますし、片方の要求だけが常に優先されるカップルには、その関係に大きなひずみがありはしないかと気になります
 なお相手から期待外れの反応が返ってくる場面でこそ、⑷相手の話をよく聴く、すなわち相手の言いたいことを理解しようと思って聴くことを心したいものです。この「聴く」は心理教育全般で重視されていることですが、カップルで互いにそれを目指すなら、それは、〈二人の関係を二人で一緒によきものにしていこうとの姿勢〉の最たるものと言えるでしょう。
 この「聴く」、まさに言うは易し、行うは難し。特にカップルでは色々な思惑や相手への複雑な、自分でもつかみ切れない思い(例:期待の裏返しの怒りなど)が交錯し、「聴く」の難しさは横綱級になりやすいもの。でも練習の機会は日々山のようにあるわけですから、気長に練習を積み重ねていただけたらと願います。そして時にはお互いを「前よりも聴き上手になったね」「よく話を聴いてくれて嬉しい」などとほめ合ったりできたら最高ではないでしょうか。

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