本学と心理専門教育の概要

 尚絅学院大学は、1892年アメリカ合衆国のバプテスト派の女性宣教師たちにより、「尚綗女学会」として創設され、キリスト教を建学の精神としています。仙台市近郊の小高い丘の上にあり、カモシカがキャンパスに時々現れるといった牧歌的な環境の大学です。三学群・五学類からなる専攻の一つとして心理学類があり、公認心理師養成も行っています。
 大学院は、2007年から「総合人間科学研究科心理学専攻」としてスタートし、現在は、心理学専攻臨床心理学コースとして、公認心理師と臨床心理士の二資格の受験資格が取得可能となっています。大学院生は、一学年6名から8名程度が在籍していますが、毎年、他大学の出身者や社会人が入学しているのが特徴の一つかと思います。
 大学院には、ティクバ(ヘブライ語で「希望」という意味だそうです)と名付けられた臨床心理相談室が併設され、ここで学内実習も行っています。相談室は、キャンパス内の講義等から少し離れた場所に建てられており、大学院の臨床系の専任教員が6名と非常勤のカウンセラーが1名、専任の事務員が所属しており、相談業務や学生の指導にあたっています。

臨床心理相談室の活動

 臨床心理相談室には、面接室3、プレイルーム大1、プレイルーム小1、事務室、待合室、カンファレンスルームがあり、月曜日から金曜日の午前10時から18時まで開室しています。およそ年間十数件の新規ケースを受け付けており、主に大学院生が担当しています。相談形態としては、対面での面接と、コロナ禍の時期に開始した遠隔での面接の両方を実施していて、相談者の希望により選択することができます。他の相談機関などを経験した方が来所されることが多く、まだ経験が少ない大学院生が担当するのはちょっと難しいケースが多いという印象もあります。

面接室

学内・学外実習

 大学院生は、一年次の後期から、学内実習として、臨床心理相談室でのケースを担当することになっています。それぞれのケースごとに、教員やカウンセラーがスーパーバイザーとしてつきますので、学生はケースごとに異なるスーパーバイザーの指導を受けることになります。また、順番で回ってくるケース・カンファレンスの発表で、教員、相談室カウンセラー、他の学生からの意見やアドバイスを受けることで、普段のスーパービジョンとは異なる角度からの学びを行うことも重視しています。
 学外実習については、一年次と二年次の前期・後期のそれぞれに、10日程度の学外実習を行なっています。実習施設としては、精神科病院、総合病院などの医療施設を必須として、その他、児童相談所、児童自立支援施設などの児童福祉施設、附属中高、EAPなどがあります。また、少年鑑別所や刑務所といった司法施設への見学実習も実施しています。学外実習の巡回指導の際などは、施設の実習担当職員から意見やアドバイスをいただくことで、学内では見ることができない学生の一面を把握したりでき、いただいた情報を学生の指導に有効に活用するよう心がけています。

臨床心理相談室

研究指導

 修士論文作成を中心とした研究指導は、主指導教員と副指導教員の二名が主に指導を行なっています。それに加えて、学生たちは、他の教員にも積極的に質問に行ったりもするようです。小規模で、教員と学生の距離が近いことのメリットでしょうか。また、学生には学会への参加や、可能であれば発表なども勧めており、そうした経験は学生にとって良い刺激となっているようです。
 修士論文の提出期限は例年1月末で、その後に発表会も実施していますが、公認心理師試験が年度内に実施されるようになったことから、この時期は学生たちにとっては非常に厳しいスケジュールとなっています。調子を崩す学生もいたりしますので、教員にとっても気が抜けない期間となっています。

就職等

 学生たちの就職先は、公務員、スクールカウンセラー、医療機関、発達支援関係などが主です。最初は嘱託職員や非常勤職から仕事を始めて、経験を積んだところで常勤職に就くというパターンが多いようです。学生たちは、自己の興味関心や学外実習での経験なども踏まえて最初の就職先を選ぶようですが、経験を積むことで、新たな関心領域へと転じていくこともよく見られます。

本学の特徴

 本学の特徴としては、教員と学生の距離が近く、学生が、気軽に教員に相談したりしやすいということがあるかと思います。教員集団の方にも、それぞれ個性的な学生たちを、みんなで育てていこうという姿勢が共有されており、教員間では学生についての情報共有なども密に行なっています。それぞれの学生の持ち味を伸ばし、その人らしい心理臨床家に育っていけるように、サポートしていくことを大切にしています。

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