昨年より、久しぶりにスクールカウンセラーとして勤務しています。以前と違っていたのは、児童の情報を共有するサポートファイルの半数近くに心理検査報告書がはさまれていたことでした。実施された場所は、発達クリニック、総合病院、教育センターなどさまざまです。リストには多くの場合、WISCやK-ABCといった個別式知能検査が含まれています。こどもが心理検査を受ける機会は増えてきたと実感します。本稿では、そんなときに役立つポイントをいくつか挙げてみます。

知りたいことは何ですか?:
アセスメントの問いを立てる

 検査の前に、お子さんに対する「どうして落ち着きがないのだろう?」「書き写しが乱雑で読めない。本人にあった学習法を考えてあげたい」「再びトラブルに巻き込まれないためには、どうしたらよいのだろう?」といった問いを、ありのままの言葉で伝えてください。心理士はそれらの問いをふまえ検査を選択し、結果を解釈します。治療的アセスメント(Finn,2007)の方法で、近年日本でも広まっています。

長所を心理士に尋ねる

 WISCなど個別式知能検査は、こどもが苦手なところばかりでなく、強みも発見することができます。例えば数字に強かったり、あるいは書くのは苦手でも話をしっかり聞けたりといった長所かもしれません。
 PFスタディという対人関係場面を用いた検査では、時に弱きを助け、強きを挫くような純粋な優しさが認められることがあります。描画法では、想像した以上に豊かなこころの世界が表現されることもしばしばです。問題の背景に潜む長所に光を当てることは、臨床現場でこどもの自信や自己肯定感につながります。

こどもは心理検査をがんばります

 実施に60分から90分かかる検査もあります。それだけの時間、新しい課題をこなし続けるのは大人でも大変です。体育のシャトルランのように、短時間集中の気合いが必要なものもあります。こどもはがんばりますし、心理士もパフォーマンスを引き出せるよう環境を整えます。睡眠や体調も影響するので「お腹が減って力がでない~」とならないよう、なるべくコンディションを整えてお越しください。一方、それが難しかった時にもご遠慮なく仰ってくださいね。考慮しながら進めます。

結果をゆっくり話し合う

 日を改めて、結果の説明があります。整理されたデータを見ながらこどもの特性や個性を話し合ったり、アセスメントの問いにお応えする機会となります。AIも対話型の時代です。しっくりこない時はどうかお気兼ねなくご質問ください。普段の生活を知るのは保護者で、そういった生活での実感や具体的なエピソードは結果の解釈にとても役立ちます。気持ちが少し動くかもしれません。そういった時こそ変化の兆しです。「こどもの気持ちが前よりもわかるようになった」「こどもへの眼差しの解像度が上がった」「子育てのヒントが得られた」という体験をともにしましょう。

報告書を保管してください

 報告書を渡してくれる施設も増えてきました。こどもの発達を振り返るよい資料となりますので、ぜひわかりやすい場所に保管しておいてください。母子手帳には身体の発達や健診での様子が記録されますので、そこに挟んでおくのもお勧めです。

●参考文献
Finn,S.E.(2007).Inourclients’shoes.Mahwah:LawrenceErlbaumAssociates.
野田昌道・中村紀子(訳)『治療的アセスメントの理論と実践クライエントの靴を履いて』金剛出版、2014年

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