岩壁 私はマラソンや走ることが結構好きで、実は三津家さんがランニングしている姿を見かけたことがあるんですよ。
三津家 本当ですか!
岩壁 すごいスピードで走ってますよね(笑)。私が走り始めたきっかけは、執筆をしていると腰が痛くて、それを解消するためだったんですが、走っている間に楽しくなって今ではレースに出たりもしています。今回、三津家さんにお話を伺いたいと思ったのは、ランニングアドバイザーとして「走ること」で人の人生を豊かにする活動をされているところです。最初はYouTubeで情報発信を始めたんですか?

三津家 YouTubeを始めるよりも前に自律神経失調症みたいになって会社を退職したんですね。会社員は結局1年くらいやったんですが、がんばり過ぎというか過労でダメになってしまって…。一時は死ぬことも考えたくらいだったんですが、今のこの自分の現状をまずみんなに知ってもらおうと思ってYouTubeとインスタで発信してみたんです。そうしたらみんなが応援してくれて、身近な方からたくさん連絡をもらいました。そのおかげで、今の活動にたどり着けたところはありますね。
 自分はずっと陸上競技をやっていたんですが、そのときはもうタイムが一番大切で、速く走ることが最も重要だったんです。でも選手を辞めると速く走らなくてよくなりました。いろんな人が「一緒に走ろうよ」と言ってくれて、それで一緒にランニングを始めたら、走ることって速く走るだけではなくて、人とコミュニケーションを取ったりすることなんだとわかって、それがきっかけで不眠や咳が治っていったんです。ランニングってすごいんだな、ランニングには人を健康にする力があるんだなと、そこで初めて知って、そのことをみんなに広めていかなきゃと思ったんです。
岩壁 なるほど、そういう流れがあったんですね。普通、僕たちは挫折や苦しい体験があってもなかなか人に言えない、人には見せられないところがあるんだけども、三津家さんはSNSで思い切ってみんなに伝えられたんですね。その勇気はどこから出てきたんですか?
三津家 特に勇気を出してやったわけではなくて、プライドがなくなったからやれたという感じです。「もう自分なんてどうでもいいや」みたいな、いい意味で吹っ切れたというか。やっぱり人間って人から良く見られたいとか、ほかの人にこう思ってもらいたいという欲求が強いじゃないですか。だからこそチャレンジできなかったり、勇気を持てなかったりするんですけど、ちょうどそれがなくなった瞬間だったんです。今まで速く走ることを突き詰めてきて、速く走る方法を人に教えてきた。それが一気に全部なくなったときに、自分って何もないなと思ったんです。
 あと、もう一つ大きなきっかけがあって、社会人1年目に日本選手権に出ることができたんですね。夢が叶ったというか、10年間ずっと陸上をやってきてそこが一番輝かしい舞台なんです。でも実際に出てみると、参加料は自分で払わなければならないし、観客はほぼいなくて客席はガラガラ、競技を見ているのは関係者ばかりで、ここを目指してがんばってきたのに満足感も達成感も感じることができなかったんです。これは何かがおかしい、このことは「外」に伝えないといけないと思いました。

岩壁 そうした経験を経て、最初はまだ伝えたいメッセージが何かはわからなかったけれども、ともかく発信を始められたということですね。
三津家 そうです。それで最初は「速さ」を見せつけていました。時速何十キロで走ります、100メートルを何秒で走ります、みたいな。でもそこから自分の気持ちに変化があって、そんなことではなくて、仲間やファンとの触れ合いだったり、笑顔で楽しく走っている様子だったり、自分の発信する内容が、自分の成長や自分の価値観の変動とともに少しずつ変わっていきました。そうしたらより多くの人に見てもらえるようになっていったという感じです。

岩壁 いろんな意味で激動の時期だったけれども、発信することを通して健康を取り戻したし、自分のやりたいこともどんどん発見していったと。
三津家 確かに「速さ」を失ってしまったんですが、それ以上のものをたくさん得られた時期でした。それは人を笑顔にすることだったり、ランニングの楽しさを伝えることだったり。もちろん技術や知識を人に教えることもありますが、同時に楽しさも教えられるような人間になりたいと思ってここまでやってきました。

「苦しさ」を「楽しさ」に変える

岩壁 少し最初の話に戻りたいのですが、会社員時代に自律神経失調症みたいになって咳が出るし夜は寝られない。こんなことって三津家さんの人生において初めてのことだったんですか?
三津家 そうですね。まったく初めてでした。
岩壁 何をどうしていいかわからない、一人で悩んでいる時期はどんな感じだったのでしょうか?
三津家 それこそ心の病については何も知らなかったので、「ずっと咳が出るな」「おかしいな」から始まって、手が震えたり力が抜けたりしていました。
岩壁 心の病なのに咳が出るし、手も震えるわけですね。
三津家 「これは何だろう?」と思いつつ、「でもがんばるしかない」と思っていたんですが、あるとき体にまったく力が入らなくなって仕事中に倒れてしまって…。実はそういう失敗をした経験って今までなかったんですよ。学校では成績はずっと良かったし、運動もずっと結果を残してきたし。初めて何かそういう「できなかった」経験をして、それも大きなショックでした。ただそこで、できない人の気持ちがわかったというか、失敗した人の気持ちがわかるようになりました。大学時代も競技成績の結果がうまく出なかった時期があって、そのときも一回感じたんですけれども、さらにまたそこで深く感じるようになりましたね。
 自分はそんなに強くないことを知ったし、あと、論文や学会の発表で「努力すれば報われるわけではなくて良いトレーニングをすることが大事ですよ」と言っていたんですけど、トレーニング以外のこと、例えば仕事で自分を追い込んではいけないし、心も追い込んではいけないんだなということを知りました。陸上では体力のマネジメントが大事なんですが、心にも体力ってあるんだなとそのとき初めて気づきました。
岩壁 とにかく努力をしたり、自分を追い込めばいいというものではない?

三津家 このことは子どもたちにも伝えたいんですが、やっぱり学校の教育って基本的に「がんばれ」なんですよ。どれだけ努力度を増やしたかで評価してしまう。子どものときから、そういうふうに心を擦り減らすことを良いことだと思っているんですよ。
 陸上でもゼーゼーハーハー苦しんだら強くなるわけではないのにそういう教え方をされて、学校では勉強をたくさんやった人が偉いみたいな。自分の労力に応じて評価されることが日本ではすごく多いように感じていて、そのことが原因で心が壊れてしまったり、真面目にがんばる人ほど疲れ果ててしまうのはすごくもったいないし、悲しいことだと思っています。

岩壁 少し言いづらいけど、僕は「サボること」も好きで、一生懸命やるけれども、どこかで「一生懸命サボって」いた部分もあったりするんです。でも今、三津家さんが言った一生懸命がんばること自体が常に強要されたり、努力と忍耐が美徳としてその意味が疑われないのは、危険に感じるところもありますね。
三津家 大事なのは「私はこれだけがんばった」ではなくて、「これだけのことをやるためにがんばった」になるはずなのに、現実は違うじゃないですか。だからこそ、今「楽しい」を教えているのは、楽しめたら努力を感じないし、自分ががんばりを感じない。その状態が一番無敵だと思っているからです。何事も楽しんでやろう、能動的にやろうという伝え方をするようにしていますし、僕は人生そもそもを楽しんだ者勝ちだと思っているので、「ランニングが楽しい」ことも教えますし、ランニング以外でその人に好きなことがあれば、それでいいと思っているんですよ。
岩壁 とても興味深い話ですね。私自身は、過去の傷ついた体験をどんなふうにしてより意味や意義のある経験に変えていくのかということがすごく重要だと思っていて、やっぱりその過程では「わくわくする」ことであったり、ポジティヴな感情体験が必要なんですね。でもどうでしょう、「楽しい」と「苦しい」のバランスについてはどう思われますか?

三津家 それはめっちゃ難しい質問は僕の中では自分からは求めなくてですね(笑)。何だろう、「苦しさ」いいけど、やっぱり楽しいことをやるために苦しさを受け入れなければいけないときもあると思っています。あと、楽しさって何かとなったときに、今パッと思うのは「いかに笑えたか」ですね。自分の顔が明るくなれているか、人に対して笑顔になれているか。それが自分の中での「楽しい」の基準です。
岩壁 マラソンのゴールのときの写真ってみんなすごく幸せそうな顔をしていますよね。
三津家 もうあの瞬間のためにみんな42キロを走ってますからね。僕、好きなランナーの方がいて、その人はコマネチの恰好をしながらゴールするみたいな人なんですけど、最後の10メートルを楽しむためだけに42キロ走っているんですね。普通はできるだけ早くゴールしたいはずなのにわざわざ止まって、その10メートルをまるでランウェイを歩くように楽しんでいるのがとても素敵に見えて…。そこには「速く走らなければいけない」「がんばらなければいけない」みたいな考えがないんですよ。普通、スポーツって勝ち負けじゃないですか。勝った人だけが喜んで、負けた人が悲しむんですけれども、それがマラソンだとみんなが勝ちを味わえるんですよ。
岩壁 そうか、それがマラソンやランニングの素晴らしさですね。

三津家 やっぱり人って誰かと自分を比べて「私は苦手だから…」とかすぐ言うじゃないですか。でも、ランニングって苦手でもいいんですよ。あくまで自分の成長との戦いなので。
岩壁 それはすごくいい話ですね。確かにスポーツって勝ち負けが大事で、負けると涙を流してみんなで肩を抱き合って…ということを一緒に体験するのはとてもいいことかもしれないけれども、例えばマラソンで1万人が走って1万人全員がそんなふうにして「自分に勝つ感覚」が持てるというのはすごく面白いですね。

三津家 スポーツの楽しさはもちろん勝ち負けの部分もあるんですけど、僕は技術の習得が一番楽しいと思っていて、たぶん「できないことができるようになる」って人間の欲求の中でもすごく高いはずです。マズローの欲求階層説ではないですが、生理的欲求や社会的欲求の上に自己実現の欲求があって、自分がこうなりたいとか、そういった夢を叶えるのにランニングは最適だと考えています。
 例えば、今までできなかった早いペースで走るとか、すっきりしたスタイルの体になりたいでもいいんです。誰でも目標を得やすいのがランニングで、野球であれば打てないボールを打てるようになるとかですが、ランニングはそれを数値で見られるんですね。タイムという客観的な数値で見られるので、自分の成長が目に見てわかりやすい。しかも使うのは自分の体一つだけなんです。
岩壁 そう考えると面白いですね。自分の体一つで、何かに頼ることなく自分の成長を実感できる機会ってほかにはなかなかないですよね。
三津家 その楽しさを味わうのに年齢は関係なくて、ぜひ若いランナーが増えてほしいし、あと女性のランナーがすごく少ないので増やしていきたいと思っています。

「有言実行」で盛り上げる

岩壁 話は変わりますが、「Full House」(2025年3月8日にTIPSTAR DOME CHIBAで開催された陸上イベント)のことを伺ってもいいですか?いい意味で陸上界の「事件」だったと思うんですけど、これはどんなふうに始まったんですか?
三津家 先ほど日本選手権に出たときの話をしましたが、大会が終わったあとに一緒に行っていた先輩とめっちゃ語り合ったんですよ。「思っていたのと違った。このままじゃだめだ」「いつか俺たちで変えてやろう。革命を起こそう」って。
 そのときの気持ちとしては、やっぱり陸上を盛り上げたい、選手にちゃんと夢を与えたい、そして観客には熱狂を与えたいということがあって、すべてはそこからスタートしました。そもそもランニングを観る文化って世界でもほとんどないんですよ。観るとしたら日本では箱根駅伝ぐらいですかね。
岩壁 箱根駅伝はテレビ中継もあってみんなあれほど観るのに、それ以外のときは全然ですよね。あとは東京マラソンでしょうか?
三津家 確かにマラソンや駅伝はまだ観てもらう機会がありますが、でもトップ選手に限られたりしますよね。しかも観るとしてもテレビで眺めるぐらいじゃないですか。だからこそ、観客がその場で観て興奮したり熱狂したり、この選手はすごいと直接感じる機会をもっと増やしたかったんです。しかもスポーツをただ観ているという感覚ではなくて、エンターテイメント性を高めて演出も工夫して、もう「観る人ファースト」のショーをやるぐらいのイメージで企画しました。

岩壁 今までプロスポーツの中に陸上は入っていなかったわけで、それをあんなふうにみんなで楽しんで、みんなで盛り上がる機会にしたのは初めてですよね。
三津家 誰かが動かないといけないけれども、やっぱりオフィシャルな大きい団体は「アスリートファースト」でなければいけない難しさがある。だからからこそ、自分たちがやるしかないとがんばりました。
岩壁 本当にゼロから始められたんですよね。

三津家 自分でパワポを使ってプレゼンをしてスポンサーを25社集めました。提案も交渉も全部自分でやって、開催費用についてはもちろん自己資金も投入しています。構想から実現までほぼ4年かかりました。
 結局、「陸上を盛り上げたい」と言っても口だけの人が多いんですよ。なんかそういうことにもうんざりして腹が立ってきて、本当に盛り上げたいんだったら本気を見せろよと思って。先ほどお話しした先輩と二人で、間にイベント会社とかも挟まずに作り上げていきました。
 ただ、途中で僕ら二人に限界が来て、そうしたら周りにいた人たちが少しずつ手伝ってくれるようになったんです。最初は反骨精神でやっていたんですが、でもいざやって終わってみると、オフィシャルな団体の方からも評価をしてもらって、こんな年下の若造の僕のところにわざわざ挨拶に来て「協力したい」と本気で言ってくれて、そこで初めて自分たちの想いがみんなにもちょっと伝わったんだと感じました。
 今年の3月にやった1回目は、とにかく注目度と話題づくりを重視して、タレントさんやインフルエンサーさんをたくさん呼んで出てもらったんですが、次からは一般の選手の方ももっと増やして、参加するアスリートの方にも価値を感じてもらえるものにしたいと思っています。もし2回目をするとしたらもっとみんなで協力し合って、もっと大きなものにしたくて、やっぱりそのためには陸上業界全体を巻き込まないと無理だなと思うことがたくさんあったので、誰に協力を依頼するかとかをちゃんと見定めてより意義のあるものを目指したいですね。

目の前の人の笑顔を求めて

岩壁 ここまで本当にすごく豊かな話を伺うことができたと思っています。今から決める必要はないんですが、この先の10年や20年を見据えたときに、何か三津家さんが見たいと思っている将来のビジョンはありますか?
三津家 ここまで4年にわたって自分のすべてを注ぎ込んできた「Full House」というイベントが終わって、一回バーンアウトみたいになってしまったんですね。自分の欲求はすべて満たされたというか、お金だったり知名度だったり社会的役割だったり、すべてが満たされてそれで1カ月くらい休んだんです。人から見られることにも疲れて、なるべく人の目につかないように髪も黒く染めました。そんな状態で一度だけ陸上の解説の仕事に行ったんですが、テンションも上がらないし、髪の色のせいか人に気づいてもらえないのが悲しくて。それで結局、自分は何がしたいのかって考えたら、人を笑顔にしたいし、その瞬間を見たいということに尽きるんですよ。そういうふうに言うと偽善に聞こえるし、たぶん今までは偽善でそういうことを言ってました。でも本当に人の笑顔をリアルで見たい。なので、僕は募金とか絶対にできないんですよ。やっぱり目の前にいる人を笑顔にしたいと思っているので。
 そのための一つの方法として、「Full House」のようなスポーツイベント、観るスポーツというものを完成させたい、もっと新しいものを作りたいと考えています。この考えに至ったのは、実はNHKの大河ドラマ『いだてん』の主人公になった金栗四三さんがきっかけなんです。僕の高校は熊本の玉名市というところなんですけれども、金栗さんと出身も一緒で育ちも一緒、高校も一緒で大学も一緒なんですよ。
岩壁 そのことは昔から知っていたんですか?
三津家 高校生のときから知っていました。金栗さんは箱根駅伝の創設者ですが、もう何か運命を感じて、じゃあ次は僕がやるしかないなと。それで玉名市の観光大使になって、JAたまなさんとも契約して、今回の「Full House」のスポンサーには千葉市のイベントなのに玉名市の名前が2つもあるんですよ。
 そういうふうに地元にも貢献したいし、何か理想が高過ぎる気もするのですが、その金栗さんの影響もあって彼がやったことを「すごいこと」の基準にしているところがあります。みんなから認められて、みんなをこれだけ楽しませて、箱根駅伝でみんなの人生を変えている。あれだけの選手たちが人生を懸けて箱根に戦いにいくわけじゃないですか。あの場に出られたら人生が変わるというような、何かそういう場所を自分で作り上げたいですね。抽象的に言うと「人を笑顔にしたい」になりますが、新しいスポーツの形によって人を笑顔にする方法を自分が生み出したいなと、みんなの笑顔の瞬間を目の前で見られる活動をし続けたいなと思っています。
岩壁 三津家さんの口から『いだてん』の話が出て、不思議なくらい納得ができますし、理想が高いと言われましたが、でもそんなふうにして、箱根駅伝のように100年先も残り続けるものができるかもしれないと考えることは素晴らしいですね。

三津家 ちょうど「Full House」の開催中に「僕が大事なのは110万人のSNSのフォロワーじゃなくて、今ここにいるあなたたちです」と言って、フォロワーたちが「え?」「私たちは?」みたいな感じで初めてコメントが荒れたときがあったんです。でも僕は決して嘘はついていなくて、僕に対して時間とお金を使って労力をかけてあの場に来てくれたみんなの方が大事だし、その人たちの笑顔を見ることが僕の嬉しさなのでまったくの本心ではありましたね。結局は目の前の一人を、僕はこれからも大事にしたいんだと思います。

岩壁 よくSNSではフォロワーがすべてというか、その数を重視する傾向がありますが、三津家さんは実際に会って、その場にいる人たちの笑顔を見たいし感じたいということですね。
三津家 もうそれが一番ですね。だからYouTuberとかTikTokerとかインフルエンサーという言葉を自分の存在をわかりやすく人に説明するときに使うことはあるんですが、なるべく使わないことの方が多いです。僕はただみんなを楽しませたいと思っているだけなので。ランニングアドバイザーとしてランニングの楽しさを伝える。あくまでも「伝える人」というスタンスは崩さずに活動していきたいなと思っています。
岩壁 今日のお話はどれも素晴らしいメッセージだし、お話を伺うことができてよかったです。陸上というタイムがすべてという世界から、観ることの楽しさや勝ち負けではない喜びがあるお話もすごく印象に残ったし、金栗さんや箱根駅伝を例に、世界のどこにもないようなことを目指されているというのもすごくわくわくしますね。最後に本誌の読者に何かメッセージはありますか?

三津家 そうですね。もし今、心理的な病気になったり、心が苦しい方がいたら僕の人生を見てもらって、ピンチは逆にチャンスになるんだよということを言いたいです。ぜひいろんなことにチャレンジしてほしいし、すぐには無理でも少しずつ「やってみよう」を実践してほしいなと思います。
岩壁 その「ん〜、やってみよう!」(三津家さんの合言葉。人差し指を立てるポーズ)って、どこから出てきたんですか?
三津家 特に作ろうと思って作ったわけではなくて、動画の中で自然と「やってみよう」と言ったのがバズって。なので、たまたま偶然ですね。
岩壁 そうか、偶然なんですね。でもその裏には何か哲学のようなものが込められてる感じもしますね。
三津家 これは後付けなんですけど、「ん〜、やってみよう!」の「ん〜」の部分で一応考えているんですね。とにかく何でもかんでも「やれ」じゃなくて、「悩んだり迷うぐらいならやっちゃったらいいよ」という意味です。迷ったときこそ引いたら絶対に後悔すると思っているので。やって後悔することはないから、みんなチャレンジしてみようよというための合言葉です。
岩壁 今日は本当にたくさん良いお話が聞けました。とても楽しかったです。
三津家 めっちゃ熱く語ってしまってすみません!(笑)

三津家貴也(みつか・たかや)
ランニングアドバイザー。ランニングの魅力を伝えるインフルエンサー。筑波大学(体育専門学群)、大学院(人間総合科学研究科体育学専攻)でランニングについて研究。現在SNS総フォロワー110万人を超える。TikTokアワードジャパン2022では「Sports Creator of The Year」を受賞。NHK熊本放送局「くまラン」のランニングコーチとして出演。ランニングコーチ、モデル、体育の非常勤講師などマルチに活躍中。

岩壁 茂(いわかべ・しげる)
カナダMcGill大学大学院カウンセリング心理学専攻博士課程修了。心理学博士(Ph.D.)。2000年、札幌学院大学人文学部専任講師。2004年3月よりお茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授、2022年4月より立命館大学総合心理学部教授。専門分野は、心理療法プロセス研究で「人はどのように変わるのか」という変容プロセスに関する研究とプロセス研究に基づいた臨床指導を行っている。研究テーマは、感情と心理療法、セラピストの困難、心理療法における感情の変化、心理療法統合、臨床家の職業的成長と訓練など。2017年よりエモーション・フォーカスト・セラピー研究所を開設し、相談活動や専門家向け訓練を続けている。

広報誌アーカイブ