特集02: 心理士のリアルな生活 スクールカウンセラーでありキンダーカウンセラーでもある一日
著者 桐朋学園初等部/東京都公立学校スクールカウンセラー 村上彰美
スクールカウンセラー制度が始まって30年近くが経とうとしています。ちょうどその頃、「スクールカウンセラーになりたくて」心理士に就いた私は、以来ずっと学校現場を中心に活動してきました。現在は、公立小・中学校と私立小学校・幼稚園に勤務しています。スクールカウンセラー(以下SC)は非常勤がほとんどで、私の勤務する自治体の公立学校も基本的に1校週1日(大規模校は週2日)の勤務となっています。私立は各校によって違い、私は週2日勤務しています。それぞれ環境の違いはありますが、SCとしての動きは共通しています。そして近年では、幼稚園・保育園におけるキンダーカウンセラー(以下KC)の分野も注目されており、私もその両方の現場に携わっています。SC、KCの活動は現場によってそれぞれ幅がありますが、私の現場での1日を通して、この仕事の面白さと可能性についてお伝えしたいと思います。
校舎全体を相談室と考える
SCの1日は「とにかく忙しい!」の一言に尽きます。なぜなら、SCは相談室にこもることなく校舎全体を相談室としてとらえ、歩き回ることが多いからです。朝から夕方まで面接予約で埋まっている日も多々ありますが、そんな日も先生方とケースの共有や連携のために、職員室、保健室を何往復もします。そして校舎内を巡回し、生徒の様子を観察することも欠かせません。巡回は「今日はSC来ています!」と先生や生徒たちに知ってもらう時間でもあります。廊下では、挨拶を交わすだけでなく、以前相談に来た生徒が「あれから友達に話してみました」とその後の報告をしてくれたりもします。また、先生が「○○さん、今週は教室に入ってますよ」とさっと情報をくださることもあります。こうして校舎内を回っていると、たくさんの出会いと情報が集まり、新しいケースにつながっていくのです。
中学校SCの1日:チームでパスを投げ合う
中学校は不登校対応が多く、別室登校の生徒支援、保護者面接、生徒の相談、先生方とのコンサルテーションで1日はあっという間に過ぎていきます。出勤後は、まず30分程かけて職員室、校長室、保健室で先生方と情報を共有します。この情報収集で不在だった日の学校の状況や生徒の経過がわかります。「チーム学校」の一員であることは、SCひとりでは成しきれない多くのリソース(資源)を得ることができ、1+1=2でなく3にも4にもなるのです。その後は保護者面談や別室登校の生徒支援が続きます。給食をさっと済ませて、昼休みの生徒相談に間に合わせます。生徒の相談は、学校生活の不安、友人関係、家族関係、学習や自分の性格や特性についてなど多岐にわたります。自主来談も多く、生徒たちは学校の中に「安心できる場所」を求めているのだと感じます。必要に応じてSCは守秘義務を守りつつ、先生方と情報を共有しながらチームで支援を進めていきます。この時、SCは口頭で、あるいはメモを活用して先生方と情報を共有しパスを投げます。すると先生方がそれぞれの場面でさりげないサポートを行ってくれます。次の週にその後の様子を共有し、また次の支援へとつなげていきます。このパスの投げ合い=協働作業が、生徒や保護者への支援をより手厚いものにしていきます。これはSCにとっての醍醐味でもあります。ただ、中学校にいると「なぜもっと早く支援につながらなかったのか」と感じるケースも少なくありません。そうした経験から、私は小学校SCとしても勤務するようになりました。
小学校SCの1日:子どもの世界に入り込む
小学校での活動も中学校と基本的な動きは大きく変わりませんが、授業観察の時間がとりやすく、授業の様子から学習理解や発達の特性のアセスメントにつなげていきます。中学生よりも子どもとの距離が近く、授業中に「ねえ、来て」とよく声もかかり、自然と顔見知りが増えていきます。また、休み時間は相談室を開放してトランプや折り紙、ボードゲームなどでいっしょに遊びます。興味深いのは、特に誘っていないのに要支援の児童が自然と集まってくることです。担任の先生と話していると「あ、あの子だ」と重なることが多く、支援の糸口となるのです。遊びや学びの中で子どもの世界に入り込み、「その子の学び方、遊び方」を知ることで理解や支援の方法がみえてきます。もちろん、SCがみえるその子のすがたは一面に過ぎません。先生方と話し合いながら「何に困っているのか。強みはどこか」を一緒に探っていきます。放課後、こうした時間を積み重ねることで先生方との信頼関係も深まり、保護者も含めたチーム支援へと発展していきます。小学校では「早期発見・早期対応」が大切なテーマだと感じています。
キンダーカウンセラーの1日:幼児期の専門家として
私が勤務している小学校には附属幼稚園があり、KCとしても活動しています。KCとSCの大きな違いは「KCは幼児期の専門家」であるという点です。週2日の勤務日に保育巡回と降園時にラウンド相談を行い、うち1日は午前中を幼稚園で過ごします。ラウンド相談とは、KCが降園時に園庭に立ち、保護者が気軽に予約なしで相談できる時間です。幼児期は、自治体による乳幼児健診が就学前健診までの間ほとんどなく、保健センターにも勤務している私は、この「空白の時期」にKCとしてできることを模索してきました。ラウンド相談では、子どもへの声かけやかかわり方、発達、きょうだい関係など身近な相談が寄せられます。そしてその後の様子を再度話しに来て下さる方も多く、これはKCならではの温かいやりとりです。また、保育中に子どもたちと一緒に活動することで課題がより具体的にみえてきます。先生方と話し合いながら役割分担し、小学校への「継ぎ目のない支援」を「チーム園」として実践していくことが目標です。
SC・KCのリアル:人と人をつなぐ
学校や園は子どもたちにとって毎日が予測不能な「大海原」のような場所です。そこでこころのエネルギーが枯渇しないように、私たちはチームで支え合っています。SCやKCは支援が必要な子どもへの対応が中心ですが、全校生徒への「予防的な活動」も重要な仕事です。全員面接やリラグゼーション、ストレス対処法、こころの授業など学年に応じてその活動の内容はさまざまです。これらの実践を通してSCの可能性はさらに広がっていきます。このようにSC・KCは、相談活動を通して「人と人」「人と場」をつなぐことにあります。子どもを真ん中に置き、チームの一員である心理士としてこれからも丁寧に歩みを続けていきたいと思います。