キャリア=仕事?

「キャリア」という言葉を聞くと、多くの人は「仕事」や「職歴」といったイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。文部科学省はキャリアを「人が生涯の中でさまざまな役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね」と定義しています。この定義を踏まえると、キャリアを仕事の文脈だけで捉える見方が、必ずしも十分とは言えないことがわかります。人は働くという役割を果たしながら、同時に誰かの友人として、家族の一員として、そして自由な個人として生活しています。
 キャリアを仕事だけに限らず、生活や人生全体として捉えようとする際に、ヒントになるのが「ライフキャリア」という言葉です。ここでは、キャリアとライフキャリアの定義を厳密に検討することはしませんが、“キャリア=仕事”という一般的な捉え方を広げて、“生活や人生全体”を扱おうとする視点がライフキャリアだと理解しておくとよいでしょう。つまり、働くことだけでなく、人間関係、家庭、地域、余暇など、生活を構成するさまざまな役割や時間をまとめて考える視点です。こうした広い視点を意識するために、仕事上の経歴をワークキャリアと呼び分ける研究者もいます。

ライフキャリア:重なり合う複数の役割

 このような見方はキャリア理論の初期から示されてきました。ドナルド・E・スーパーは、人の一生を「労働者」「家庭人」「市民」「余暇人」など、複数の役割が重層的に重なり合うものとして捉えました。またサニー・ハンセンはキャリアを「Love(愛)・Learning(学び)・Labor(労働)・Leisure(余暇)」という4つのLで説明し、人生を一枚のキルトのような織物として描いています。
 私たちは、これらの役割を状況や年齢に応じて組み替えながら生きています。ある時期には学びが中心になり、ある時期には働くことや家族との生活が中心になる。役割は互いに影響し合い、時に補い合いながら、その人らしい生き方を形づくっていきます。働き方や人間関係の在り方が多様化するいま、単に「どんな仕事を選ぶか」だけではなく、「どんな時間を大切にして生きたいか」を考える重要性が高まっています。

複数の役割をどう組み合わせて生きていくか

 ライフキャリアという言葉は、人生を「ひとつの役割」から見ることをやめ、複数の時間や関係性のバランスから捉え直すための手がかりになります。どの役割が中心にくるかは、個人の価値観や心身の健康、家族の状況や社会情勢などによって揺れ動きます。予期せぬ出来事によって優先順位が変わらざるを得ないこともあれば、新しい役割が生まれることもあります。
 どの役割や時間をどう位置づけるかについて、あらかじめ明確な正解が用意されているわけではありません。ライフキャリアは、そうした判断を重ねていく中で、どの時間にどのような意味を与えていくのかを探っていく営みであり、その過程にその人らしさがにじみ出てくる点に特徴があります。
 このように整理してみると、働くこと・学ぶこと・地域との関わり・愛情関係、そして休息まで、すべてが人生を相互に支えあいながら構成していく大切な時間であり、要素であることが見えてきます。そして、そのなかには「余暇(レジャー)」という、しばしば見落とされながらも非常に重要な時間が含まれています。

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