編集後記・事務局だより
編集後記
梅雨が明け前から猛暑が訪れました。ことばは時代とともに変わると言われますが、気候ことばは更新が必須ですね。もう梅雨寒は使えません。暑さ寒さも彼岸までも…。第33号がまもなく完成です。月並みですが、一冊の雑誌が出来上がるには多くの方のご尽力があります。すべての方に感謝申し上げます。
巻頭対談では、性教育YouTuberのシオリーヌさんに登場いただきました。そして特集1は「学校では教えてくれないこと」として、お金やネットスキルなどの話題を取り上げました。これらを通して、学校知ということばが連想されます。狭く言えば学校で教えてくれること、教科書に載っていること、広く言えば、公の場で話題にしてもよいこととなります。一方で、世間知ということばもあります。学校知でないもの=世間知とは言えませんが、公には扱いにくいものをここに含めます。扉では山崎さんが、これらを建前と本音と名づけながら、その境界線に読者を誘います。
特集2は「心理支援者 こんなところで働いています」です。心理の活躍の場が広がっていることを実感いただければと思います。「こころは見えないけれど、人がいるところに必ずあるのですから」は扉の岩倉さんの一文ですが、人の営みの傍らに支援者がいる、必要ならば手が届く、そんな社会を目指したいとの思いがあります。広がりを実感できることは仲間としての心強さでもあります。こんな場所にもいるよ、と読者からお知らせいただけるとうれしいです。
「当事者」のコーナーでは、自らの「特性」についての解説や対処法を述べていただきました。特性という言い方は発達障害が広まるにつれて頻繁に用いられるようになりました。英語ではCharacteristic。似た言葉に性格、英語ではcharacterか。微妙に違うのか。将来、これらのことばはどのように使われるのでしょうか。
書物に残すということは、ことばをいったん留め置くという意味があります。本紙もそのひとつですね。
(広報委員 香野 毅)
事務局だより
日本心理臨床学会は、個別事例に対する援助方法についての研究を重視する学術団体として、42年前の1982年に発足しました。本学会の学会誌である『心理臨床学研究』は、こうした個別事例についての研究論文を中心に編集され、学会発足当初の1983年から年2回、その後、刊行数が増え、年6回刊行されています。
それに対して、本誌『心理臨床の広場』は、日本心理臨床学会の学会員以外の方、特に若い方々にお読みいただけるように、2008年9月に創刊号が刊行されました。その後は、年2回、発行され、今回は33号になります。
本学会の正会員は、現在約2万9000名余りです。学会発足時は、約1300名でしたので、学会としては、この40年余の間に大きく成長いたしました。今後、さらに若い方々と、様々な機会を通して、ご一緒に心理臨床について深く学ぶ機会が増えますよう願っております。
本学会の年次大会は、年1回開催されております。従来は、各大学に開催を担当いただいて参りました。しかし、近年の第41回大会・第42回大会は、理事会主催で開催いたしております。今年開催の第43回大会も、理事会主催で、『一人一人の心が生きる社会に向けて——機能する心理臨床とは——』とのテーマのもとに開催されます。この第43回大会の内容については、本誌『心理臨床の広場』第32号に、第43回大会実行委員会の吉川眞理委員長によって、丁寧に記載されておりますので、どうぞお読みください。本学会ではどのような研究がなされているのか、お分かり頂けると思います。また、一部の企画のみですが、オンラインで公開されますので、会員でない若い方もご覧いただけます。
こうしたオンラインの利用は、数年前に起こったコロナ感染症の状況下において、対面開催が困難になり、工夫されて実行に至ったものです。オンラインを利用することによって、遠方在住の会員や、子育て中で自宅を空けられない会員も参加が可能な企画が増え、会員へのメリットも生じました。コロナ感染症という困難に直面したことで、新たな工夫がなされるに至ったのです。このことは、人間の困難に向き合う学問である心理臨床そのものの神髄にも通じるものであると思っております。
本誌をお読みくださいました若い方々には、ご感想や取り上げて欲しい内容についてのご希望等を学会事務局までお寄せ下さいますと有難く存じます。
また、学会員の皆様には、学会誌等についてのご意見も頂戴したく思います。
(常任理事 伊藤良子)