希望の取扱説明書。ブルーな気分で落ち込んでいるとき、うまくいかないとき、うつうつとした気分のときに手に取っていただければと編まれました。
希望にトリセツなんてあるの?と不思議に思われるかもしれません。希望は自然と湧いてくるもの?
そうですね。たしかに希望に満ち溢れている時には、取説は必要ないでしょう。
しかし、人生の道行きの中で困難な状況や思い通りにはならないこと、ネガティブな感情や考えにとらわれて抜け出せなくなってしまうことがあります。そんな時はまるで「この世の終わり」のような気持ちになりますよね。これは私たちの奥底に眠っている超ネガティブな気持ち、「絶望」につながります。絶望は希望を駆逐し、こころにからみついてしまいます。
新型コロナウィルスによって、当たり前だった日々が失われ、行事や大会が中止になり、留学や遠征などの予定がなくなったり、友達と遊んだり学んだりする時間が制約されたり、たくさんのことが中止、延期、自粛を余儀なくされています。
それぞれの人生にとってひとつひとつが大切なことです。希望を託していたさまざまな出来事を失ってしまう。私たち心理臨床家にとっては、このように「何かを失うこと=喪失体験」は、こころに大きな影響を与える問題です。積み重なる喪失体験や日常の変化がじわじわと効いてきて、希望が見失なわれ、絶望が顔を覗かせてしまってはいないでしょうか? そして、ウイルスは人と人との親密な関係のあいだに入ってくるものです。人間関係が遠ざかり過ぎたり、近づき過ぎる時、さまざまな問題が生じます。この人と人との関係の変化の影響も私たちは心配しています。
ひとつだけ伝えておくべき大切なことがあります。絶望はまるでそのまま絶望に感じられますが、それは「こころ」の中の感情や感覚です。ともに考えていくこと、工夫をしていくことで、絶望は希望に形を変える可能性をもっています。
私たち心理臨床家にとって、この「希望」と、対になる「絶望」はいつも切実で身近な問題です。この2つをどう扱っていくのか、毎日知恵と工夫を絞っていると言っても過言ではありません。ただでさえ、生きづらさがある上にコロナ禍に見舞われた現在。この特集はこころが苦しい時に、どのように希望を持ち、希望を保つのかについての臨床家の知恵がつまっています。「苦しいけど、ここから歩きはじめよう」そんな気持ちをこめました。
まだまだ希望が見当たらない?取説だけでは足りなかった?取説を読んでみて興味を持った?
そんな時は、私たちカウンセラーに会うためにカウンセリングルームの扉を叩いてください。カウンセラー一同こころからお待ちしています。