「自分の感じていることや思いが言葉にならない」と感じることはありませんか?自分にとって大切なことであるほど言葉にするのは難しいものです。
それは、言語が、社会での意思疎通を主な目的として発達し、共有可能な内容を扱うようにできていて、「私の」体験といった個別性の高いものをとらえたり伝えたりすることに不向きだからです。だからこそ、人は、言葉にならない思いを何とかなぞろうと言葉を探します。あるいは、言葉にならないものが、声音や表情や行動といった、言葉によらない、ノンバーバルな語りとして表れたりします。それ以前に、心は、生きものとしてサバイバルしていく力そのものであり、いちいち意識にのぼらず言葉にもならないような心の働きも備わっています。
つまり、その人の心が生きている世界やその見え方・体験のあり方を知っていくには、言葉による、バーバルな語りだけでなく、ノンバーバルな語りも含めて、心の耳を傾けて、心の身体で触れていくことが大切です。特集2では、ノンバーバルな語りを心で受けとめていくことについて、アスリートの心理臨床、ユング派プレイセラピー、動作法、認知行動療法の立場から、それぞれについて、専門の心理臨床家の方にお話して頂きます。