災害、パンデミック、紛争、長期にわたる不況など、私たちはかつてない社会的危機に直面しています。大人たちは様々な場面で、どのように生き延びればいいのか、どのように危機を克服すればよいのか、眉をひそめ、ため息をつきながら、所構わず不安と苦悩を吐き出します。そんな大人たちのそばで、子ども達は大人たちを不安にさせてはいけない、心配させてはいけないと、自分の不安やつらさを気づかれないように、大人と目を合わさず、息を潜めながら暗い隅っこで身を固めます。
 大人たちの社会的危機や問題に対する憂慮が未来の保証に対する不安からくるものであるとすれば、その不安を拭うもっとも確かなものは、未来を生きる子どもたちが自分を信頼し、自分の人生を愛しながら、だからこそ、他人の人生も尊重しながら生きる大人になることでしょう。そのためには、危機の時代である今こそ、子ども達に光を当て、安心して声を出せるように、胸を開いて深呼吸できるような日々にすることが何より優先されるべきことといえます。
 子どもの心理臨床の場では、子ども達の姿が顕わになり、言葉にならなかった思いが語られます。特集2では、子どもたちのいる現場で、子どもたちに寄り添い、一緒に思いを巡らせながらことばを紡ぎ出し、子どもの心を丸ごと受け止める日々を過ごしている心理臨床家の方々に子どもたちの思いを伝えていただきます。紙面から伝わる子どもたちの息吹を感じながら、一緒に子どもの心に思いを馳せる機会になれば幸いです。

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