高校生にとって、カウンセラーは、スクールカウンセラーを代表として、何をやっている人なのか皆目見当がつかない、という存在ではないと思います。ところで、よく私(カウンセラー)が訊かれる質問のひとつに、「朝から晩まで他人の話を聴いていて、疲れませんか? ご自分のストレスはどう解消しているんですか?」といったものがあります。確かに、日本において国策として、元々メンタルヘルスが頑強な人が選抜されて、心理カウンセラーになっているということでは全くありません。どちらかというと「類は友を呼ぶ」ではありませんが、心理的に苦しい思いをしたことがある人たちが、心理学に興味をもち、心理臨床家になっているような気もしないでもありません。
 そうすると、「自分のストレスをどう解消しているの?」という素朴な問いへの回答としては、心理臨床家になるための実習を含む訓練や、臨床心理学や関係学問の知識や技能の修得(及びそれを自分に応用すること)が重要である、というのが模範回答なのかもしれません。
 しかし、私たちは、カウンセラーである前に、当然のことながら、生身の一人の生活者です。この特集にあるような「職場でのつながり」「同門のつながり」「同じ領域のつながり」「個人的な生活でのつながり」は、そのまま多くの生活者にとって、家族(人間以外を含む)や友人、同業者、同じ学校・職場、そしてコミュニティでのつながりに通じることと思います。その意味で、この特集は、みんなに共通する日常の話題といえるかもしれません。心理臨床家が書いているからといって、ものすごく特別な話が展開されている訳ではありません。しかし、プロフェッショナル(心理臨床家)にとって、自分自身を支えるセイフティネットを作っておくことは、実は何にも増して重要なことなのではないでしょうか。

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