心理臨床は、日常の環境ととても密接につながっています。クライエントが、今、どこに住んでいるのか、昔、どこに住んでいたのか、どこで生まれたのか、親はどこ出身だったのか、というようなことが実はその人の考え方、物の見方など、いろいろなことに影響しています。それは、カウンセラーにも当てはまります。身近なことで言えば、言葉です。カウンセリングの多くは言語を介して行われますから、言葉の違いはとても大きく影響します。同じ日本語を話しているけれど、〇〇弁と呼ばれる違いがあるのです。私が初めて四国に来た時も、年配の方とのカウンセリングでは、それが疑問文なのか、否定文なのかすらわからないということがあったり、同じ言葉だけど意味が異なるものがあり、クライエントの気持ちがつかめなかったりすることがありました。
また、言葉以外では、自分が当然だと思っている習慣などが、実は自分が住んでいる地方特有のもので、他の地方に行けば、まったく常識ではないことがあります。あるいは、心の様々な問題についてもその地方特有のとらえ方や治し方があったりします。このような違いについては、その地方から外に出て初めて気が付くものです。つまりそれまではまったく意識していなかった違いが浮き彫りになり、改めて、その地方特有のものだったことを知るわけです。
今回の特集では、北海道、東北、東海、四国、沖縄で臨床活動をしている方々から心理臨床の地域性について紹介してもらいました。その中から改めて皆さんのお住まいの地域のことも振り返っていただけたらと思います。