私には小学校の頃から好きなアイドルやタレントがいた。どうしてその人や物が好きなのかうまく説明できないけど好きだった。その対象のことをもっと知りたかったし、いつも一緒にいたかったし(写真で)、ファンレターも書きたかった。世界中でその対象以上に素敵な人や物はない。なぜみんなその素晴らしさに気づかないんだろうと思っていた。それなのに・・・それなのに・・・ある日突然、それ以上に素敵な対象に出会い、また恋に落ちるのであった。好きになればなるほど詳しくなり、その素晴らしさについて周りに布教したくなる。好きな音楽のときは同じ曲をリピートで聞きまくるので家族に嫌がられた。これはまったくの「オタク」気質である。そのまま大人になった私は今でも、すぐにはまり、すぐに好きになり、好きになるとまっしぐらである。しかし、大人になるとこのような「オタク」活動は少し自重するのがよいのではないか、成長していないと思われるのではないかと思い、こっそり行うようになった。しかし、ここ数年、このような人や活動に「推し活」という名前が付けられ、正々堂々と行えるようになった。
 コロナ禍になり、活動自粛制限が出され、「推し」に実際に会いに行くことが困難になったが、「推される側」から「私たちのことを好きでいてください!」というメッセージである様々なコンテンツがオンラインで配信されるようになった。そして同じ「推し」仲間にSNSでめぐり合うことができるようになった。マイナーな対象の「推し活」をしているときは、どこにいったら自分と同じ思いの人に出会えるだろう と思っていたが、SNS上にはなんとたくさんいることか。
 臨床活動において「推し」の話題にはよく遭遇するし、「推し」に会うために外に出るようになったり、バイトを始めたり、コミュニティに参加するようになった人もいる。そこで新たな対人関係に挑戦してみたり、自己主張してみたりと、様々な経験を「推し」のためにするのである。今回の特集は「推し活」について様々な視点から執筆してもらいました。

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