コロナ禍の中で、学校に通う子どもたちは、周囲の人々とどんな経験を重ね、どんな気持ちを抱いていたのでしょうか。実際に子ども自身のコロナ禍での生活について、リアルな思いを聞いてみたいと思い、二人の児童生徒にインタビューを行いました。一人目は小学五年生のふうかさん(仮名)、二人目は高校二年生のじろうさん(仮名)に保護者とご本人の許可を得て、オンラインでインタビューをさせてもらいました。(令和三年十二月実施)。インタビュー内容については、個人情報に関わる部分は修正をして記載しています。

小学校五年生 ふうかさん

 令和二年の小学校三年生の終わり 頃、コロナ禍が始まりました。通っている小学校は毎年度クラス替えがあるため、ふうかさんは「三年生も もうすぐ終わるなぁ。クラスが別になる友達もいるから、さみしいな」と思っていました。ところが、ニ月後半に小学校が突然休校になってしまい、お別れ会も中止になり、同級生と別れを惜しむこともできませんでした。
 そんな中、大好きなダンスや合唱といった習い事を続けることは出来ていました。しかし、レッスンはオンライン、発表会も中止となり、辞めてしまう友達がたくさんいたそうです。それでも、インターネット上で発表会が出来ることになり、練習の成果を皆に観てもらえてうれしかったそうです。ただ、このような活動が実現出来たのは、ふうかさんのご両親の様々なフォローがあってのことでした。その後、六月に再開した四年生の学校生活は、全員マスクで、給食時は黙食など、それまでの学校生活とは大きく異なるものでした。ふうかさんは戸惑いましたが、初めて同級生になった子でも顔は知っていたので、新しいクラスにも馴染めたようです。学校行事は、運動会は二学年ずつ分散して実施、学習発表会はクラスごとに動画を撮影するだけになりました。
 ふうかさんは「クラスの友達とは話せるけど、クラスが別の友達とは全然会えなくなっちゃった」と感じていました。ふうかさんには仲の良い幼馴染みの友達がいましたが、クラスが別のため話せる機会が減ってしまっていました。そこで、親の管理のもと、親友とはSNSで会話できるようになりました。
 ふうかさんに、この二年間をふりかえってどう思う?と聞いてみました。ふうかさんは「去年は大変だったけれど、今は慣れてきました。友達とも会えるし、いろいろなことが出来て楽しく過ごせたと思います」と答えてくれました。このように、様々な変更を強いられ、残念な思いを抱きながらも、学校生活や習い事の活動をふうかさんはがんばっていたことがわかります。その背景には、新しいクラスで同級生との関係を作れたことや、幼馴染とも付き合いを続けられたことが大きく関係していると感じました。
 そして、ふうかさんが習い事を続けられたこと、幼馴染とも連絡を取り合えたこと、それらはご両親の支えがあって実現出来ていることがわかりました。このように、小学生には大変な状況の中でも、友人関係を保ち、保護者との信頼関係が築けていることが本当に助けになるのだと思いました。

高校二年生 じろうさん

 コロナ禍が始まった時、じろうさんは中学三年生の終わり頃でした。六月よりスタートした進学先の高校での対面授業では、最初から全員マスク、部活や委員会などは禁止され、お弁当は黙食と、制限のかかった高校生活となりました。一日中、全員がマスクをしているので、同級生の顔がわからないままだし、常にマスクをしていると、逆に同級生の前でマスクを外すことに抵抗感を持つ人が多くなったそうです。じろうさんも、同級生達の顔がわからないままだし、同級生にマスクを外して自分の顔を見せるのも「恥ずかしくて嫌だ」と感じてしまい、「なんか気まずいな」と思っていました。
 二学期になり、家庭科の授業で皆で協力してエプロンを作る作業をすることになり、それがきっかけで同級生同士が知り合えて、やっと人間関係が出来たと感じられたそうです。部活動は軽音楽部に入り、バンドも組みましたが、皆でスタジオで練習することが禁じられ、文化祭も中止で発表する機会もなく、じろうさんは「つまらない」と感じていました。先輩達から、去年までは楽しく部活動がやれていた話を聞いて、「なんで僕の学年だけ何も出来ないんだ」 と、先輩達を妬む気持ちを持ってしまったそうです。
 二年生に進級しても、学校生活はほとんど変わらない状態でした。それでも、少しずつ部活動の練習や発表が出来るようになり、さらにSNSでやりとりして、先輩や後輩を含めて学校の知り合いも増えて、初めて恋人もできました。じろうさんが今心配していることは、先輩が卒業して自分たちが三年生になると、コロナ禍前に毎年実施されていた体育祭、文化祭、部活動といった高校での恒例行事や活動を、実際に経験した生徒がいなくなってしまうことです。そうなると、来年度学校行事や活動が再開されても、自分たちは「どうすればよいかわからない」というのです。じろうさんはこの二年間を振り返り、「誰が悪いわけでもないので、やるせない。でも自分なりにがんばってきたし、仲間と楽しく高校生活を送れていると思います」と言ってくれました。
 以上のように、じろうさんはコロナ禍の中で高校生になり、初対面の同級生同士で、マスクや黙食という状況は、想像しただけでも関係を作るのが大変そうだと思いました。お互いにマスクの顔に慣れてしまうと、今度は同級生にマスク無しの素顔を見せるのが嫌、と聞いた時は驚きましたが、一方で青年期の若者らしい感覚でもあり、この状況の影響の大きさを痛感しました。また、「コロナ前の学校生活が引き継がれなくなってしまう」というじろうさんの心配は、難しい問題であると感じました。学校では、部活や文化祭など様々な活動が、先輩から後輩に引き継がれて行われています。その意味で、コロナが収束した時、新たな学校の文化をどのように形作っていくのかが、大きな課題であると思いました。

最後に

今回お話を聞かせてもらった二人は、困難な状況の中でも楽しく充実した学校生活を送れていました。しかし、現在も辛い気持ちを抱えている子ども達がたくさんいます。そのような子ども達にも、関係を作るチャンスを提供したり、人とのつながりを実感できるような支援が必要だと思っています。

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