はじめに

 第40回大会は、お茶の水女子大学が担当校となり、オンラインで開催いたします。オンライン大会は、九月三日より九月五日までライブイベントが開催され、そのあと同月二六日まで委員会企画シンポジウムや、会員による研究発表の動画などの視聴ができます。
 なお、本会の大会参加は、会員のみに限定されております。また、本誌がライブイベントの前に全ての会員の皆さんの手に届いていないかもしれませんが、ここに第40回大会についてご紹介させていただきます。
 大会実行委員会一同、第40回という節目の大会に関わらせていただけることを大変うれしく光栄に存じます。本会の皆様にお礼申し上げます。

大会の魅力

 学術大会の魅力は、日常的な業務から離れて異なった視点から心理臨床を見直せること、新しい理論、実践研究にふれることができること、そしてさまざまな形での交流、などたくさんあります。一年に一度しか会う機会がない仲間、同窓生との語らい、共通する関心をもつ人との出会い、これまで専門書や論文を通してふれてきた憧れの存在と対面すること、登壇者と参加者のやりとりからまさに知が戧り出される瞬間に立ち会うことなど、そこに居合わせることによってはじめて起こる出会いや学びが何よりも記憶に残る特別な時間を作り出すように思います。私がこれまで参加してきた大会はそれぞれ思い出深いもので、大切な時間であり、自分の臨床家そして研究者としての成長にかけがえのない機会となってきました。
 コロナ禍において、多くの大会や研修会が中止になりました。そのような中で、昨年度の第39回大会は一一月にオンラインで開催され、数多くの会員の方が参加されました。オンラインでは遠方の方も参加できる、そしてそれぞれの都合に合った時間にセッション動画を視聴できるという利点もあり、今後大会だけでなく、研修などでもオンラインの良さを活かして会員の方の学びを促進する可能性を垣間見ることができました。

第40回オンライン大会における対話

 第40回大会のテーマは、「心理臨床における対話と戧造―歴史の継承と未来の構想」といたしました。本会の四〇年の輝かしい歴史に敬意を表し、そして先人たちの偉業を振り返り、もう一方で、一〇年先に待っている五〇年という金字塔に向けて、これから何をやっていくのか、ということについての対話を目指します。その中で異なる臨床オリエンテーションや、世代の会員の交流を通じて世代間の継承を促進して、ともに本会を作っていくという意識と協働関係を強めていけたらと考えております。
 オンラインでそのような対話をどのように実現するのかというもっとも大きな課題について、本大会では、最初の三日間(九月三日〈金〉から五日〈日〉)だけ視聴・参加が可能な、異なる形の「対話」「参加」型企画を準備いたしました。
 まず「構成化ディスカッショングループ」は、二時間の枠で、数名のパネリストが特定のトピックについてそれぞれの立場から意見を述べたあと、参加者がオンライン上で少人数のグループに分かれて議論できる機能(ブレイクアウトルーム)を使い、参加者を交えたディスカッションを行うものです。確定しているテーマには、異なる複数のオリエンテーションの立場から検討する「ケースフォーミュレーションのさまざまな視点」、第三世代の行動療法と呼ばれる動きについて扱う「認知行動療法の新たな潮流」、「心理臨床家の趣味の世界とセルフケア」、近年の社会現象と心理臨床の接点を扱う「社会と心理臨床」などがあります。
 次に、「先輩に訊く」という企画では、著名な臨床家、理論家に登壇していただき、形式張らない自由な雰囲気の中で参加者は心おきなくご質問できます。
 登壇者とテーマの一部は、信田さよ子先生(家族と女性)、岡野憲一郎先生(新たな精神分析の時代ー解離、トラウマ、恥、脳科学)、石川悦子先生(学校臨床の基礎と発展)、諸富祥彦先生(パーソンセンタードアプローチ)、鶴光代先生・宮崎昭先生(動作法)などです。
 他にも魅力的な企画がたくさんあります。三つ目は「体験型ワークショップ」です。パソコンの前で三日間座っているのはかなり疲労がたまります。そこで、身体をほぐし、気分転換をしながら、会員の皆さんの関心をもつ心身へのアプローチを学べる時間です。ヨガ、マインドフルネス、ストレッチ、ダンス、演技、合気道、フォーカシング、リラクセーション法など多種多様な企画を立てております。それぞれの専門家が担当してくださいます。是非楽しんで大いに学んでください。
 加えて、特定のテーマについての研究に関する質問が自由に出来る「リサーチコンサルテーション」の時間も設けています。一度臨床現場に出るとなかなか研究の指導を受ける機会が得られなくなってしまいます。そこで、さまざまな領域やトピックに関して、研究計画、研究法、論文のまとめ方など、自由に質問をする場を作りました。具体的には、自分を出発点として研究をする、質的研究・グラウンデッドセオリー法、箱庭の研究、事例研究、医療保健領域での研究、プロセス研究、臨床訓練および臨床家の職業的成長の研究などのコンサルテーションを企画しています。一人の質問者の持ち時間は限定されますが、有用なアドバイスが得られることは間違いないはずです。最後に「オープンフォーラム」があります。これは、ポスター発表の横にある談話室・休憩室のような場所で、トピック別にグループがあり、そこに自由に参加して会話に加わることができます。気分転換に、そして予想外の出会いを求めて散策してみてください。きっと刺激が見つかるはずです。
 もちろん、例年通り、口頭発表、ポスター発表、そして各委員会企画、自主シンポジウムも準備が進んでいます。上述のライブイベントと自主シンポジウム以外は、九月二六日までアクセス可能になっていますので、一つでも多くの企画をご覧ください。なお、本大会ではオンラインによる事例発表を見送ることにいたしました。すでに多くの心理臨床家がオンライン面接や訓練に移行されています。しかし、事例のオンラインでの扱いについては検討事項が多く、本大会では倫理委員会によるシンポジウムにおいてこの重要な課題が扱われます。
 お仕事、その他さまざまな理由で対面の大会には出席が難しい方も参加できる大会として、そして、さまざまなトピックについて有意義な対話が生み出される会として、多くの方に参加していただけることを祈っております。そして、意味のある出会いや学びが一人ひとりにあり、来年度以降の大会がさらに楽しみになり、五〇年に向けての思いを共有できることを望んでおります。これらのオンラインの対話は、新たな試みであり、技術的な問題も起こるかもしれません。それを含めて大会を通して皆さんの感想や意見をいただき、今後さらに会員による有意義な大会や研修を作っていけたらと存じます。
 それでは、皆様のご参加をこころよりお待ちしております。

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