編集後記

 第33号にあたる次号の「心理臨床の広場」が刊行されるのは、2024年9月頃の予定なので、ちょうど日本心理臨床学会第43回大会が横浜とWEBで開催されている頃です。第43回のテーマは、「一人一人の心が生きる社会に向けて―機能する心理臨床とは―」です。現在、日本だけでなく、世界各国で様々な事件・事故が起こったり、人権が踏みにじられるような出来事を体験したり、気が付かないうちに傷つけたり、傷つけられたり、そんな悲しい出来事が起こっています。私たちの心はたくさんのストレスを受けていると思います。そんなときこそ、心理臨床が必要となります。それが今大会のテーマでもあると思っています。実際にカウンセラーやセラピストに会いにいかなくても、まずは、本誌のような雑誌から心理臨床の扉を開いてみて、少しでも心理臨床について知ってもらいたいです。
 今号の1つ目の特集は、「様々な家族のカタチ」です。「伝統的な家族制度」が大事だの、崩れるだの、どうのこうの言っている人もいましたが、現在は様々な家族の形があり、それぞれ家族としての機能を果たしており、それぞれ幸せに暮らしています。そんな様々な家族のカタチを紹介しています。2つ目の特集は、「コミュニケーションツールと面接」です。カウンセリングの面接は1対1の対面が基本でしたが、技術の発展とともに、また感染症の拡大とともに、対面以外の面接方法が急激に広まってきました。SNS、ビデオ、電話、メールなど、様々なツールを使った面接について、その特徴などを紹介しています。3つ目の特集は「LGBTQ+」です。LGBTQや性的マイノリティという言葉はかなり知られるようになりましたが、それぞれレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーについて詳しくわかっている人は未だ少ないのではないかと思います。この特集では、心理臨床の専門家でない人々に役立つように様々な性のあり方があるということを知ってもらおうと思いました。自分の性別や好きになる対象について「あれ?」と多数派と違うと感じている人や、周りや支援する人にLGBTQ+の人にとって役立つ内容を集めてみました。本誌の作成には多くの方々のお力をお借りしました。広報・編集委員の皆様、学会員の皆様、創元社様、ありがとうございました。

(広報委員長 葛西真記子)

事務局だより

 2023年度は、新型コロナウイルス感染症が、季節性インフルエンザなどと同じ5類感染症に移行し、人々の生活上の制限が解け、街に活気が戻ってきました。相変わらず様々な感染症が流行っており、油断はできませんが、生活上の衛生・予防の習慣は、ここ数年の経験から、社会的にもかなりの進化を遂げました。私たちは、同じところにただ戻ってきたわけではなく、今まさに、未来に向けて進みつつあるように思います。
 本学会の運営も同様に、コロナ渦中では、対面による委員会が全くできなくなりましたし、学術大会も、急遽web大会となりました。それでも、その後3年の間に、web大会と対面大会の2つを行う方式を確立してきました。
 昨年は、『心理臨床学の新たな多様性を拓く』のテーマの下、横浜で対面大会、その後引き続きweb大会を開始し、多くの参加者が集まり、様々なプログラムを体験することができました。
 本誌で紹介されている今年度の大会では、『一人一人の心が生きる社会に向けて―機能する心理臨床とは―』をテーマに、準備が進められているところです。今大会では、対面大会に会員同士の交流プログラムが加わり、web大会では、開催期間が延長される等、これまで以上にさらに充実した内容となるよう、工夫されています。
 本誌の読者には、高校生を始め、心理臨床に関心のある非会員の方々が多くおられます。学術大会は、原則会員のみ参加できるものとなっており、直接会場にお誘いすることができないので、残念です。それでも、学会のホームページでは、本誌のバックナンバーを始め、心理臨床に関心のある方向けに、様々な紹介動画がアップされています。オープンアクセスできるトピックも沢山ありますので、ご関心のある方はどうぞ、日本心理臨床学会の公式サイトをご覧いただけましたら幸いです。
 最後になりましたが、会員の皆様には、これまでも大会、学会の運営に関して、沢山のご理解と励まし、ご協力を頂戴しましたこと、厚く御礼申し上げます。引き続き今大会もどうぞよろしくお願い申し上げます。

(財務担当理事/大会委員長 青木紀久代)

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