第40回大会実行委員長という大きな仕事が一つ終わってほっとしている。自分にとっても、ライブ企画の司会や運営を担当したお茶大の院生にとても貴重な経験になった。登壇者や参加者の皆さんと一緒に作ったという勝手ながらとてもうれしい感触が残っている。
 自分の研究者としての道のりを振り返ると大会はとても大きな意味をもってきた。さまざまな文献を読んでも実際に執筆者が発表するのを間近で聞くのとはインパクトが違う。また、完成品ではなく進行中の研究の経過について知るのはとても刺激的である。毎年、大会で発表することを一つの目標にして研究仲間や学生と一緒に研究に取り組んできた。ただ、正直なところ、大会開催中に発表をずっと聞いているわけではない。特に海外の大会だと時差のせいで、コーヒーをがぶ飲みしても、しばらく椅子に座っていると、目をつぶった覚えもないのに、時間が過ぎていることもあるのであまり詰め込めない。むしろ、発表を少し聞いては、外のベンチに座って久しぶりに会った友人と発表について、ああだこうだとおしゃべりしている時間のほうが長い。そのうちに、ほかの知り合いがその前を通り、おしゃべりの輪が広がり、その日の夜の予定が決まっていく。無駄話のようだが、そんな時間とおしゃべりから、いろいろな研究のアイデアが生まれ、その後、長い間、研究者としての旅をともにする仲間の輪が出来ていく。そんな時間が、自分の肉と血になっていったような気がする。
 オンライン大会や研修会が増えて海外に出向かなくてさまざまな勉強が出来る。しかし、どうやったら、参加者のあいだにかけがえのないつながりが出来て、一緒にその学会を作っていきたいと思えるようになるのか、そしてその学会の館員であることがそれぞれのアイデンティティの一部となるのか、ということを考えさせられる。ズームで参加者全員が同じ大きさの長方形がもて、平等に参加できるチャンスが作られる。陽が降り注ぐベンチの上でのおしゃべりも、オンライン大会や研修で可能となってくれることを願うし、そんな大会が作っていけたらなんと素晴らしいことだろうと思う。

広報誌アーカイブ