『心理臨床の広場』を手に取ってお読みになっている皆様、今、どのような状況でしょうか。私はこのコロナ禍においてオンラインのすばらしさと、不便さを感じております。それはおそらく皆様も同じでしょう。
 オンラインによってアメリカで開催されている研究会や研修会に参加したり、国際学会で発表を行ったり、様々な国の研究者を集めての実践報告会を開催したりということができています。以前だったらこのどれか一つをするだけでも大変でした。
 不便な点は、オンラインで参加しているときにWi-Fi の調子が悪く、海外の先生のお話が途中で途切れてしまうことです。また、時差の関係で、日本で日中仕事をしながら夜中から早朝にかけての学会に参加するというのは二十四時間労働になってしまい、何日も続けることはできません。しかし、もっとも不便なことは、親交を深められないことと、相手の体温や空気を感じられないことです。
 これはセラピーおいても重要なことで、海外ではかなりの割合でオンラインセラピーを行っているようですが、私の知り合いのアメリカのセラピスト達は新しいクライエントに対してオンラインでセラピーを行うというよりは、継続してきたセラピーを一時的なものとしてオンラインで行っていると言っていました。これまでの関係性、相手の人となりを知っているからこそ成立しているのだろうと思います。しかし、オンラインカウンセリングとしての良さもあることは十分承知しているので、この点についてはさらに研究で知見を深めていけたらと思います。
 私は、毎年海外の学会に参加し、研究を発表したり、意見交換したり、今後の共同研究の打ち合わせをしたり、また、今まさに世界ではどのようなことが起こっているのか、話題に上がっているのか、あるいはまだ言語化されていなくてもその流れや方向性を感じることができました。言わば、海外の学会参加は私のbattery chargerのようなものです。だからもうそろそろ充電切れです……。

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