今期(第六期:任期二年)の支援活動委員会がスタートした二〇二〇年は、新型コロナウイルスの感染流行により、対面での会議が持ちにくくなり、委員会活動のみならず、理事会、社員総会、理事選挙、年次大会など様々な集まりに影響が出始めた年であった。前期(第五期)の支援活動委員会は災害支援研究の活性化を検討しつつ、ホームページの特設ページ「コミュニティの危機とこころのケア」を整備したが、任期の終盤に感染流行が始まったので、特設ページの中に「新型コロナウイルス対応に関する情報」のコーナーを新設した。
 今期の委員会としても、特設ページの充実を継続することは引き継いだ。しかし、新型コロナウイルスの流行当初は未知の感染症に対する不安が広がり、文科省が令和二年二月二八日、小、中、高校、特別支援学校の一斉臨時休業を実施して大きな混乱が起きた。卒業、入学などの時期でもあり、子どもたちへの影響は大きかったが、仕事を持つ家族への影響も大きかった。このような、社会への多大な影響を与える新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、支援活動委員会の活動も、新型コロナウイルス感染や影響に苦しむ人、その心理的支援をする人たちの支援を今期の活動の中心に据えていくことにした。

感染症専門家による新型コロナウイルスの講演

 感染拡大している新型コロナウイルスに関する情報は、マスコミ報道やネットに溢れているが、より正確な情報を感染症の専門家から聞き、支援活動委員会の委員の知識を更新するところから始めた。二〇二一年二月に日本心理臨床学会事務局で講師の高山義浩先生に「新型コロナウイルスの流行と対策―効率を落としてもレジリエントな地域社会へ」というタイトルでお話ししてもらった。高山先生は、沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長、感染症学、地域医療の専門家で、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の参与でもあり、厚労省の会議も踏まえ、質問にも答えてもらった。この内容のポイントをまとめて、学会HPの支援活動委員会の特設ページに掲載して会員と共有した。

感染者、濃厚接触者に対する差別、誹謗中傷などを防止するメッセージの発信

 学会から「信頼性の高い知識で差別、偏見、いじめ、誹謗中傷を防止しましょう」というメッセージを二〇二一年四月一日付けで、特設ページに掲載した。学会員に最新の情報を知識として持ち、一般の方や子どもたちに周知して、少しでも差別、偏見、いじめ、誹謗中傷を減らそうということと、陽性者を責めるのではなく、復帰を喜び合える社会にしていくことが、一番の対策になるのではないかという内容である。

コロナ禍における「心理的な困難」に関するアンケート調査

 コロナ禍の中での社会生活が長引く中で、学会員の職場、学校、家庭などでどのようなことが起こり、どう対応しているのかアンケートをGoogle Form で募り、集約して分析することとした。学会の研究倫理審査を経て、アンケートの実施は二〇二一年六月となった。回答された全エピソード数は五八九であった。結果と分析は一部四〇回大会のシンポジウムでも取り上げたが、論文にまとめて学会誌に情報として掲載予定である。

第四〇回大会支援活動委員会企画シンポジウム

 第四〇回大会支援活動委員会企画シンポジウムとして、「コロナ禍での心理的な困難―新型コロナは"こころ"にどんな影響を与えたか」というタイトルでシンポジウムを開催した。「心理的困難」に関するアンケートの結果、分析も踏まえて、医療・保健、教育、福祉の三領域と電話相談における、コロナ禍での実践について報告してもらい、討議を行った。各領域の実践での苦労と工夫が報告された。「心理臨床学研究」第三九巻第六号に情報として内容が紹介されている。

戦争被害者支援に関する情報について

 二〇二二年二月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて、我が国に避難してくるウクライナの人が増えている。そのような戦争被害者の方への心理的支援に関する情報や加害者とみなされて差別、いじめ等を受けるロシア、ベラルーシの方への対応、支援をしている方の心理的支援などについて役立つ情報を学会員に提示するために、学会HPの支援活動委員会特設ページに、戦争被害者支援に関する項目を加え、様々な情報を集積するベースを設定する。これからの情報の蓄積を目指して、次期の委員会に引き継いでいく。

自殺対策専門部会(支援活動委員会の子委員会)

 前期の自殺対策専門部会は「いじめ防止対策推進法の重大事態調査に係る心理職のためのガイドライン」の作成に目的を絞っていた。その完成が遅れたこともあり、第六期の部員の人選と部会のスタートは遅れ、二〇二一年一〇月になった。

支援活動委員会と合同で電話相談の勉強会

 支援活動委員会の第四〇回大会支援活動委員会企画シンポジウムの話題提供をしていただいた法眼先生に電話相談について講演してもらった。「新型コロナこころの健康相談電話」での時期毎の相談内容の変遷、「こころの健康相談統一ダイアル」での事例などで学んだ。

有名人の自殺に関する会員への注意喚起

 二〇二一年一二月に女優、歌手、声優のAさんが自殺した。Aさんは幼児から青年まで女子に人気があり親しまれていたので、群発自殺を誘発しないか心配であった。そこで、学会から会員にお願いとしてメールし、学校現場などで注意すべきポイントを文書にして発信した。

「いじめ防止対策推進法の重大事態調査に係る心理職のためのガイドライン」の修正

 前期の部会が作成したガイドラインの運用、管理についても部会として責任があり、修正について対応した。
 今期の支援活動委員会は進行中のコロナ禍の心理的困難について分析し、パンデミックに対する知恵をつけようと努力した。しかし、任期終盤に来て、ウクライナ侵攻が起きた。なかなか、落ち着けない状況が続きそうである。

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