新しく始まった連載です。心理臨床学には心の仕組みや変化についての、さまざまな理論や知見があります。そういうものを、先人たちが実際に支援を行いながらこれまで積み重ねてきました。
 そういった「知」の蓄積を、現在さまざまな問題にお困りになられている方々に役立てられたらというのが、この連載の狙いです。
 心の支援で重要なことは、なによりも理解することです。「わかる」ことそのものが、僕らを振り回していたものから距離を取ることを可能にしてくれるからです。
 ですから、あなたに起きている厄介ごとや困りごとについて、それが何であって、そしてどうしてそうなっていて、どうすると良くなっていくのかを知ることは、それだけで問題の解決につながっていくと思うのです。それを僕らの業界では「心理教育」といいます。まさしく、「わかる」ことが一番の対処であるということですね。


 今回取り上げたのは不安、感覚過敏、完璧主義です。コロナ禍の新しい日常で、僕らはいろいろなことに不安になり、敏感になり、完璧主義になっています。それはコロナによってもたらされたものですが、同時に僕らにもともとあった傾向が強調されているせいかもしれません。そして、そういう気持ちに振り回されて、つらい思いをしているのかもしれません。それがいったい何であるのかを一緒に考えてみたいと思うのです。
 もちろん、今回書かれていることが、あなたに完璧に当てはまるとは限りません。というより、そうじゃないことの方が多いでしょう。だけど、「これは自分とは違うな」と思うこともまた、少しずつ自分を知っていくことにつながります。使えるところは使って、使えないところは捨ててしまって構いません。
 もっと詳しく知りたい方のために参考文献が載せられていますので、ぜひそちらにもあたっていただければと思います。
 僕らの学問が、少しでもみなさまのお役に立ちますように。そういう思いで、この新連載を始めようと思います。

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