このページを開いてくれて、ありがとうございます。ここでは、主に10代の皆さんと一緒に、心がツラい「無理ゲー」な日をほどよく生き延びるヒントを考えてみたいと願っています。え?そんなこと学校で習わなかったんだけど…と当惑された大人の方も大歓迎。老いも若きも少しお時間をいただけたら嬉しいです。
 ところで、最近、周囲の大人からこんなことを言われた方はいませんか? 例えば、「ダラダラしてないで早く学校に行きなさいよ!」とのお怒りの声。「もっと勉強して、高い学歴を目指したらどうだ」と分かるようで分からない理不尽な提案。「ホントに受験する気あるの?Nintendo-switchやる暇あったら、勉強の『やる気スイッチ』押してよ!」という謎の要求…。
 ここだけの話ですが、ぶっちゃけ、こんな話はありがたいどころか、ウザいと感じて当然です。人間はAIと違って正論で動けないからこそ人間らしく愛しいのですから。ですので、そうした大人からの「圧」にモヤモヤするのも、ある意味で自然な心の動きだと思います。むしろ、大人の彼らに「今日の晩ご飯、10点中2点で赤点、たまにはウマいもの作ってよ」「は? 受験受験ってなんなん? 自分だって、大学出てもビル・ゲイツみたいに稼いでないじゃん」「お母さんの脇腹ヤバくね? ダイエットの『やる気スイッチ』、1000円で貸そうか? あ、コスパ悪いか、知らんけど」と言い返さないだけ、あなたは十分思いやりのある素敵な人です。Adoだったら、「うっせーわ!」と絶叫しているかもしれませんしね。

「からだ」・「気持ち」・「行動」・「考え」のサインを点検しよう

 あなたは生きているだけで十分、価値があり、守られ、そして愛される存在です。唐突にビックリされたかもしれませんが、とても大事なことなので、もう一度言いますね。あなたは「生きているだけ」で十分に価値がある。勉強ができるから、大人の期待にこたえる「いい子」だから…とかは一切関係ありません。無条件に、ただ愛される存在です。
 けれど、ときにそれに気づけず「俺なんか…」「どうせ私は…」とダメ出しや自分を責める声がダダ漏れることはないでしょうか? そして、何がツラくてしんどいのかも分からず、グルグルと悩みのループにはまる。さらに、空気を読んで「キャラ」を演じ、我慢を重ねて心のコップの水が溢れかえる。いつしか生きること自体が「ハードモードな無理ゲー」にすら思えて、自分が誰なのか分からず、無気力な気持ちに襲われる。考えただけで疲れますよね…。けれど、それはあなた一人ではないですよ。実は、今は大人の私にも同じような暗黒期がありました。
 そんな日は、まずは自分が発するSOSの声に気づくことから始めてみましょう。このことは心理学的には「自己覚知」というのですが、ザックリ言うと、自分の心の状態やサインを観察して理解し、対処する心のありようのことです。「気づく」って、実はメチャクチャ大事です。これ、多分今度の期末試験に出ます。よく覚えていてくださいね。
 一般に、人はストレスを抱え込むと、「からだ」や「気持ち」、「行動」、「考え」に色々な変化が訪れます。そして、これらの4つはお互いに強く影響しあうのです。もっとも、生きていくうえでストレスは避けては通れないものですが、それがあまりに多く重なると、リラックスできる心のキャパが減っていきます。では次に、一緒に対処方法を探してみましょう。

心のサインがあなたに教えてくれる大事なこと

 まず、「無理ゲー」な日の心が少しラクになるトリセツをお伝えします。それは、①「気づく」→②「書き出して整理する」→③「相談して繋がる」の3つです。①はすでにお伝えしたので、②から説明していきますね。まずは紙とペンを準備してください。ここでは、実際に「書き出す」プロセスがカギになります。もちろんスマホのメモ機能でもオッケーです。では、最近あなたがストレスを感じた「出来事」を書いてみてください。次に、その時の正直な「気持ち」、そして一瞬パッと頭の中をよぎった「考え」を。最後に、「からだ」の状態と実際にとった「行動」を追加してみてください。
 コツとしては、その場面が映像で浮かぶように具体的に書き出します。そして観察する。こうして文字にすると少し視野が広がり、あなたと悩みとの間にスペースが生まれます。そして、不安や怒り、恐怖、淋しさなどの一見ネガティヴな感情はすべて、心が教えてくれる大事なサインであり、あなたの心が骨折することを防ぐ意味があります。つまり、感情のSOSを適切にキャッチできれば、悩みの渦にのまれずに対処法を生み出していけるのです。
 ですから、むやみに自分を責めず、「そっかぁ…今はしんどいよね…」と大事な友人に声をかけるように、傷ついた心に包帯を巻いて、優しく手当てをしてあげてくださいね。
 次に、③「相談して繋がる」のプロセスについてです。ところで、あなたの周囲には「信頼」できそうな大人はいますか? これ、意外と難易度高いですよね。実際、他者に援助を求めることはとても勇気がいることです。必死の思いで相談したのに、相手から考えを押しつけられたり、批判や否定で返されたら余計に傷つきますからね。とはいえ、孤独と孤立は混ぜるな危険。どうか、お一人で抱え込まないように…。
 そのためのキーワードは「安全・安心」と「信頼」です。「無理ゲー」な日こそ、「この人なら大丈夫かも…」と心を開ける他者と繋がること。そして、話をじっくりと聴いてもらい、自分のツラさを労ったり共感してもらうこと。あなたの悩みを「大切なもの」として尊重してくれる大人にSOSを出し、解決のサポートを求めること。もし、あなたの学校にスクールカウンセラーがいたら、そうした心の専門家もアイデアをくれるかもしれません。
 最後に、懸命に生きていると、心は晴れの日も曇りの日も、時には想定外の嵐や大きな雪崩なだれにも見舞われます。「月に叢雲むらくも 花に風」という言葉があるのですが、日常というものは、そうそうラッキーな快晴ばかりは続かないものです。確かに眩しい日差しの日は魅力的ですが、心にも悲喜こもごもがあるからこそ、より豊かないろどりと機微が生まれる。生きるって、やっぱり面白いですね。
 だからこそ、「人生ハードモード」な心模様の日は、一人で雨に打たれないこと。次の日、ソッコー、風邪ひいちゃいますからね。そして、無理に「頑張るキャラ」はいったん脇に置く。信頼できる大人に傷ついた心をケアしてもらい、バッテリーが100%になるまでエネルギーをチャージすること。あなたがケアされるということは、ケアした大人がケアされることでもあるのです。ケアはめぐるよ、どこまでも。
 くり返しになりますが、あなたは生きているだけで十分に価値があり、守られ、そして愛される存在です。今日も一日、生き延びた自分に沢山の拍手と花束を。あなたの背中を、遠く離れてもそばで見守っている大人の一人より。

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