心理士の小野です。よろしくお願いいたします。

 「ウノ~ッ!」
 ドヤ顔で私がもうすぐ上がりであることを表明すると、「うわーまじかよー!」と文句が出始めます。
 「よしよし先に上がらせてもらうよ…え? ドロー4が3枚?」
 これは私の勤める適応指導教室の日常のほんの一幕です。ここでは、適応指導教室で働く心理士について、理解を深めてもらえたら嬉しいです。

適応指導教室について紹介します。

 適応指導教室は「教育支援センター」と呼ばれており、不登校の児童生徒が学校の代わりに通う場所です。ここでは、通っている子どもたちの基礎学力の補助(学習活動)、遊びを中心とした体験活動(小集団活動)、遠足や社会科見学(集団行動)などを支援しています。

私の職場はこんなところです。

 私の勤めている適応指導教室には、多い時で1日20名くらいの児童生徒(通室生と言っています)が通っています。職員は教員免許を持っている相談員が数名と心理士の私です。教室には、学習に必要な教材や体験活動に必要なカードゲームやボードゲームが揃えられています。ベランダでは菜園をしていて、みんなで育てたお野菜や果物がおやつになったりします。

心理士はどんなことをしてるの?

 私は、学校のスクールカウンセラー的な立ち位置で仕事をしています。「的」としたのは、職員の一人として通室生の学習支援や生徒指導をしながら心理支援を行なっているからです。通室生の生活場面に混ざって勉強をみたり、卓球の対戦相手になったり、時にお話を聴きながら、通室生の行動観察とアセスメントをしたりしています。行動観察とアセスメントは私の活動の要で、心の視点で気づいたことや感じたことを通室生や相談員に伝えていくことで理解を深め、信頼関係を構築します。
 カウンセリングを実施することもありますが、主には日常を一緒に過ごす中での世間話ややり取りの中で心理学的な理解や技法を活かしています。
 悩みもあります。私の職場では、地域性や勤務の形態上、「心理士として」だけでは通室生と仲良くなることや、その子の通っている学校、他のスタッフとチームを組むのが難しいのです。なので、まさに素の私で、体当たりで通室生や相談員と関わっています。そこが、難しいところでもあり、魅力でもあります。通室生の成長を間近で感じることができるのです。

心理士の小野でした。ありがとうございました。

 通室生には「めっちゃ話しやすい!」と言われます。心理士としての態度・知識と姿勢を保ちながら、素の自分で通室生と向き合う。もちろん、トラブルや問題も起こります。その困難を通室生や相談員と共に経験しながら、あっという間に過ぎ去る日々の中で彼らの成長を目の当たりにする。それが、何にも変え難いやり甲斐です。話しながら、彼らの不安を共に抱え、耐え、そして将来に繋げていく。それが適応指導教室で働く心理士の存在意義だと思っています。もちろん、私だけでなく、通室生同士の助け合いというグループの力もあります。通室生同士で共に傷を癒していく集団の土壌づくりも大事な仕事です。そうやって今日も私はみんなの力を借りながら、卓球で、人生ゲームで、UNOでコテンパンにされるのです。
 「はい残念! 小野先生ウケる~!」

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