本誌は広報誌である。私も前期まで数年間、編集に携わってきた。編集委員会では、よく「読者は誰なのか」が議論になった。心理職を目指す高校生・大学生なのか。現在のクライアントなのか。未来のクライアントなのか。本学会の会員なのか。結局、答えが出ないまま私の任期は終わってしまった。
 本誌の発刊は2008年である。そのとき、インターネットやSNSはいまのように普及していなかった。だから雑誌という形態は広報に適したものであっただろう。だが2025年の現在、広報をめぐる環境はまったく異なっている。
 心理職の広報は、動画や短文に向かない。端的に言って、バズるのに向いていないのだ。バズるということは、多くの人の共感を呼ぶということである。それはたいてい、すでに知られていることを強い口調で言い切ったり糾弾したりするか、思考ではなく感情に訴えて快をもたらすようなものである。それは心理職のすることではない。
 心理職の仕事は、時間がかかるし、地味だし、成果を目に見える形で示せるようなものではない(数値という形で可視化することはいくらかできるが)。
 「伝わること」は広報の手段であり、目的ではない。伝わることを優先して、伝わりやすい媒体に寄せていき、伝える内容が歪んでしまっては元も子もない。
 だから、広報をとりまく環境が変わっても、私たちは雑誌という形態を取り続けている。
 だが、雑誌がこの時代の広報にもっとも適しているかといえば、そうではないこともまた明らかである。広報委員会も、理事も、頭を悩ませ続けている(本誌のweb公開は数年前から実施されているし、広報委員会では、もっとインターネットを活用しようという議論が始まっていると聞いている)。
 一方で、時代が変わろうとも、結局のところ広報には口コミが強いというのは変わらないようにも思う。そうであるならば、広報は「お上」が考えるだけではなく、心理職一人ひとりが考え、実践する必要があるのかもしれない。消費者としてだけではなく、生産者として、みなさんが「心理職と広報」について考えていただければ幸いである。

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