「認知行動療法の視点」を味方に
中高生の皆さんから「人からどう見られているか不安で、人の輪の中に入れない。逃げられるものなら逃げたい。どうしたらいいですか?」などの相談を受けます。
皆さんの心の中には、いろんな気持ちが日々起きています。嬉しい日もあれば、悲しい日や腹が立つ日もあります。心模様が日々変化する中で、不安が大きくなり「失敗したらどうしよう」「嫌われたら、もう教室に入れない」などと思うかもしれません。
不安が強いと、日々の生活が楽しめなくなり、寝つけないこともあり、健康に過ごすために、まず自分の不安に気づくことが大切です。そんな時に役立つ方法の一つが「認知行動療法」です。この方法は、治療だけではなく、予防法としても世界で注目されています。不安で押しつぶされそうな時に、この「認知行動療法の視点」がどう役立つかをできるだけ簡単な言葉でお話します。
「不安」と上手に付き合う理由
不安は、どんな場面で感じますか?最近、あなたが不安を感じた状況を動画のワンシーンのように思い浮かべてみましょう。紙に書き出してみるのもいいですね。一人では難しい場合は、心の専門家と一緒に進めていく方法もあります。不安は、誰の心にもある感情の一つです。不安を放っておくとどんどん大きくなり、その不安に耐えられず、その場を回避して、さらに状況が悪くなることもあります。一方で、「みんなの前で発表することが不安なら、事前に発表練習をする」など、不安を減らす方法を見つけることもできます。ですので、不安と上手に付き合うことが大切です。
不安を観察しよう
不安と上手に付き合うコツは、不安が小さいうちに対処することです。まず、あなたの不安の強さを測ってみましょう。一番不安な時を一〇〇、緊張でドキドキする時を七〇、強い不安ではないけど楽しめない状態を五〇、自分の感じたままをその場で測り、小さい不安から取り組みます。
次に、不安による体の変化を観察します。例えば、不安になると心臓がドキドキしたり、手足が冷たくなったり、お腹が痛くなったりすることもあります。体の変化は人それぞれなので、"私の体はどうかな?"と観察してみましょう。
そして、不安による体の変化が出る時、"頭の中でどんな考えが浮かんでいるかな?"と観察します。例えば、みんなの前で発表する場面で、"失敗するかも""バカにされるかも"という考えが浮かぶと、不安は更に大きくなります。実は、"不安な気持ち"や"体の変化"はこの"考え"と関係していて、この考えを「考え方のクセ(自動思考)」と言います。「考え方のクセ」に良い・悪いはありませんが、不安が大きすぎたり、楽しめない時は、他の考え方を探すことや、考え方から変えるのが難しい時は、体の緊張をとる方法(リラックス法)や自分が安心する言葉かけ(セルフトーク)などに取り組みましょう。「認知行動療法の視点」から、今、取り組めそうな不安との上手な付き合い方が見えてきます。