大人が子どもを育てるという営みは人類誕生以来の基本形なのですが、子育てをとりまく環境や考え方、いわゆる"やり方"は時代とともに変化したり、地域や文化によって異なったりする面があります。今のわが国で多数派になっている少ない大人で少ない子どもを育てるというスタイル、例えば夫婦で子ども2人、シングルペアレントで一人っ子は、歴史的には高度経済成長期以降に急速に増加し、世界的にはアメリカやヨーロッパ、東アジアの一部でしかみられないそうです。「人類史からみれば、特殊な実験がはじまった」と指摘する専門家もいます。
そんなに大げさでなくとも、隣りのお宅の子育てだって、我が家のそれとはずいぶん違うようです。もちろん基本原則「例:安心安全」や共通性「例:伝承性」はあるのでしょうが、次第に自由度を増し、親子が社会のなかで戧り上げていく唯一無二のストーリーになってきたようです。
ところで、こういった自由さはいつも我々を悩ませます。皆と同じようなモデルを目指すのは息苦しいですが、どうぞご自由に!と言われても心地がさほどよくありません。しかも子どもは日々、身も心も大きくなっていきます。となると大人のほうもバージョンアップ、作戦変更、方針転換が必要になるのですが、これがなかなか難しい。
さてこのコーナーでは、多様な子育ての世界について、心理の従事者がそれぞれにまつわる話を紹介してくれます。皆さんを少し照らすことができれば幸いです。