「言いたいことが言えない」経験は誰にでもあるでしょう。内容によって、また場面や相手によって、言いにくさがあります。人間関係はいろいろな思惑―相手への期待や不安―に裏打ちされていますから、「言いたいことが言えない」のも関係のバランスの中では仕方のないことであり自然なことです。
「言いたいことが言えない」と…
とはいえ、「言いたいのに言えない」ことが多いと、相手に自分を理解してもらえないし、不利益を被ることも起きるし、何より心の中に苦しい気持ちがたまっていってしまいます。苦しい気持ちがたまりすぎると、心は決壊しないように、「言いたいことなんてない」ことにして、かかる圧力を減らそうとします。すると、自分自身の気持ちがわからない状態になっていきます。このような状態になる前に「言いたいことを言おう」と思うならば、言えない理由とそれを変える方途を考えてみましょう。いくつかの理由が考えられます。
「言いたいことを言う」権利
ひとつ目に「言っていい」との確信がないことが挙げられます。人は誰でも思ったことや考えたことを表現していいのです。これは基本的人権です。誰でも知っていることですが、本当にそれを信じられているでしょうか。「これを言ってよいのかどうか」と迷うときには、ここに立ち返って権利があることを確認した上で、「言うかどうか」を考えましょう。
「言うべきでない」のは本当ですか?
あるいは、「こんなことは言うべきでない」と思い込んでいるからかもしれません。「言えない」理由としてよく語られるのは「相手が気を悪くする」「相手に心配をかける」「場の空気が悪くなる」などです。いつも誰からもよく思われようとするのは無理があります。また、相手がどう反応するかは言ってみなければわかりません。そして、自分は「とても言えな~い」と思うことを、気にせず普通に言う人もいるのではないでしょうか。わたしたちは人間関係において、それぞれの経験から様々なルールを作り出しているものです。絶対に正しいルールとか誰にも共通のルールはありません。自分ルールが今ある場面や状況に妥当なのか、今の自分に適当なのか考えてみるのもよいでしょう。
「言い方がわからない」ときには
これまで言ったことがないから言い方がわからないこともあるかもしれません。自然に言えたらいいと思いますか? 「自然に」ふるまうためには、実は準備や練習や工夫が必要です。自分にとって言いにくいことを言うときには、あらかじめなんと言うかを考えておくとよいでしょう。映画やドラマ、小説、マンガなどに参考となるセリフや言い方があることでしょう。書いてみるのもよいですし、誰かに一度聞いてもらうと練習にもなります。また、大事な話をするにはそれなりの時間としつらえが必要ですし、相手にわかりやすいように順序よく話すことも重要です。つまり、話すには方法や技術があるのです。ただし、それは相手を自分の思い通りにしようとするための手管ではありません。
フェアな関係
人は誰もが違っており、同じ権利を持っています。ですから、意見や利害が対立し、希望や欲求が葛藤することは必然的に起こります。それを覚悟して、対等で公平な見地から相互理解や歩み寄りを目指して、互いに気持ちのいい関係が作れるといいですね。