ひとにとっての緊張
ひとが生きていく上で緊張は大事です。試験や試合の日程が発表される。それだけで気持ちがぐっと引き締まり、集中力が増し、意欲が高まります。緊張があるからこそ成長や飛躍を遂げられますね。この緊張は、適度なレベルであればいいのですが、ある一定ラインを超えて過剰になり過ぎると、人前に出るのが怖くなったりして社会活動の回避や撤退につながったりします。そこでここから先は、過剰な緊張の方について考えていくことにしましょう。
緊張が生まれるとき
◦自分は試合で結果を出したい。だからこそ必死に練習を積み重ねている。なのにいざ本番を迎えると、緊張のあまり実力が出せない
◦試験のことが不安でたまらない。夜も眠れないほど緊張している
こうした過剰な緊張に悩まされているひとは、次のような考えのパターンになじみがありませんか。
◦自分は次も絶対ミスをするに違いない
◦試験問題を見て……こんな問題、自分には絶対解けない
認知行動療法という分野では、これらを"考え方のくせ"としています。例えばひとつ悪いことが起きたとします。すると、それは他にも当てはまるに違いないという否定的な考えをもってしまいます。場面が変わっても繰り返されてしまうので、どんどんネガティブになって緊張がさらに増します。この"くせ"は長年かかってできあがっているものもあり、強敵ではありますが、試して欲しい簡単な方法のひとつは、「またいつものくせが出た」と言葉に出すことです。言葉にすることで少しだけ客観的になれるので、くせの渦中からわずかに離れることができます。
緊張の居場所
次は緊張の居場所を探ります。考え方と関係しているから脳にいますかね。あるいは緊張を感じた時、心臓がバクバクするので心臓でしょうか。確かに脳も関係しているのですが、緊張の居場所となると、"からだ"ということになります。緊張し過ぎるというのは、からだに必要以上の力が入ってしまった状態ととらえられ、肩や腕、頸、お腹、腰などにいることが多いといえます。
緊張は勝手に生まれない
緊張は考え方のくせによるもの、と紹介しましたが、改めて考えると緊張はくせによって勝手に生まれたわけではなく、さらには知らない間にどこかから飛んできて私のからだに住み着いたわけでもありません。自分で産み出し、その後、自分で強化を図っていたんです。過剰な緊張は自身で作り出したものです。自分で何とかできるはず、ととらえてみましょう。自分のからだを変える方法として臨床動作法があります。簡単な入門バージョンを紹介します。
◦からだの緊張を見つけましょう~例えば、肩をゆっくり上げます
◦動きにくいところを探りましょう~少し痛みが出たり、動きが行き詰まった感じがわかればOK。止まります
◦動きを止めたままこころを落ち着かせましょう
◦からだの感じ(感覚)に気持ちを向けましょう~肩の痛みなどがわずかでも変容すればOK
◦上げるために入れていた力をゆっくりフェードアウトするように弛ゆるめていきましょう
自分のコントロールから離れてしまったからだが自分の元に戻ってきそうな予感はありますか。少しずつ少しずつで大丈夫です。自分でからだの感じを変えることができたなら、緊張に振り回されることがなくなっていきますよ。