公認心理師も臨床心理士も養成
筑波大学では、公認心理師と臨床心理士という二つの心理職を養成しています。公認心理師は、人間学群心理学類(学部)および人間総合科学学術院心理学学位プログラム心理臨床学サブプログラム(大学院)で、臨床心理士は、同心理臨床学サブプログラムで養成にあたっています。つまり、本大学院は、「公認心理師養成機関」であると同時に、「臨床心理士資格認定協会第一種指定大学院」でもあり、公認心理師と臨床心理士の両方の受験資格が取得できるようになっているのです。 例年、大学院では(博士前期課程においても博士後期課程においてもですが)、内部進学者だけではなく、他大学から多くの進学者を迎えていますが、その全員が両方の資格取得を目指しています。
「開かれた大学」として
学部の「心理実習」は、公認心理師を志望する者にとって必須の科目となっています。明治初期に開設された師範学校以来の長い歴史と伝統を持つ「附属学校」を含む複数分野の施設において、見学を中心とした実習を行います。
また、大学院の「内部実習」は筑波大学心理相談室および筑波大学子ども相談室が、「外部実習」は大学敷地内にある「筑波大学附属病院」などがメインの施設となっています。同病院は、「良質な医療を提供するとともに、優れた人材を育成し、医療の発展に貢献すること」を理念として掲げる教育・研究病院です。同病院の実習指導者と大学院の実習担当教員との緊密な連携により、充実した実習が可能となっています。
ところで、この記事を読んでくださっている皆さんは、筑波大学についてどのような印象をお持ちでしょうか。他大学から入学してきた院生や修了生に、筑波大学の印象を聞くと、異口同音に返ってくるのが「とにかくキャンパスが広い」という感想です。それもそのはず、筑波大学のキャンパスは東京ドーム五五個分。大学の単一キャンパスとしては北海道大学に次ぎ全国二位の広さなのです。
キャンパスの広さに驚いた彼らの次の反応は、「こんなに臨床をしっかりやるとは思ってもいなかった」という悲鳴(?)です。筑波大学では、研究者やその他高度職業人を志向する学生にも十分対応できる教育体制をとっていることから、研究が盛んというイメージが強く、臨床のイメージは薄いのでしょうか。私としては、臨床についても研究についても、卒業や修了の直後だけでなく、一〇年たっても、二〇年たっても、やはり「筑波大で学んでよかった」と思ってもらえるような教育ができればと願いながら、心理臨床家の養成に取り組んでいます。
「横のつながり」と「縦のつながり」
新型コロナウィルス禍により、多くの大学同様に筑波大学もさまざまな制約を受けました。従前通りの対面での授業ばかりでなく、遠隔(オンライン)での授業も活用せざるを得ませんでした。ただ、これは決してマイナスな面ばかりではなかったと思います。慎重かつ万全な感染防止対策を実施すること、改めて倫理的配慮について検討することなどを通し、院生たちは、「対面による心のエッセンシャルワーカー」たる条件や資質を見直す格好のチャンスを得たのではないかと思うのです。
新型コロナウィルス禍の影響下、本学が長い歴史の中で培ってきた、学生の「横のつながり」や「縦のつながり」はどうしても稀薄になりがちなところがありました。二〇二〇年一一月時点、臨床心理士養成大学院協議会において、各校の取り組みについて、アンケートが実施され、日本臨床心理士養成大学院協議会報第二八号(二〇二一年)に結果が掲載されました。その自由記述の内容からも、院生同士の横のつながり、縦のつながりの弱体化等の【インフォーマルな場面を含む対人交流減少の懸念】など、心理臨床家の養成教育が直面している厳しい現状に関する問題意識が共有されていることが読み取れます。
しかし、であるからこそ、筑波大学の持ち味でもある"お互いに切磋琢磨しながら学べる体制"を、大学として提供できるよう、改めて継続的に努力していきたいと思っている次第です。