編集後記

 今号にはこれまでの「臨床心理士資格審査の受験資格を取得することができる大学院一覧」に加えて新しく「公認心理師の資格審査の受験資格を取得することができる大学・大学院一覧」を掲載することとなりました。現在も公認心理師の資格取得のためのカリキュラムを整備している大学や大学院はありますので、今回の一覧はまだ全体を把握したものではありませんが、現在のところわかっているものを掲載しました。皆様の参考になればと思います。
 今号は、特集として「受験の心理学」と「心理臨床のフィクションとリアル」を取り上げました。受験に関してはこれまで取り上げたことのない領域ですが、受験をする子どもだけでなく、その家族にも多くのプレッシャーがかかり悩みが発生するものですまた受験に受かったことや受からなかったことから派生する様々な心理的な問題、悩みもあります。このような内容について心理職として何ができるのか現状はどうなっているのかについて考察した大変貴重な特集となりました。二つ目の特集ですが、これまで様々なメディアで心理臨床、カウンセラー等が描かれてきました。また、心理の専門職ではないけれど、そのような役割を果たしている人について描かれたものもあります。それらを取り上げ、実際の心理臨床と違うのか、また似ているのかについて考えました。これは社会に向けて私たちが自分たちのことを十分説明できているのか、理解を得られているのかを知る手がかりともなりました。
 また、今号には昨年末にご逝去されました成瀬悟策先生の追悼記事も掲載しました。日本の心理臨床にとって大変重要な先生であり、臨床心理士の誕生にも大いに貢献された先生でした。先生のご冥福をお祈り申し上げます。
(編集委員長 葛西真記子)

事務局だより

 2021年に、日本心理臨床学会は誕生から40周年を迎えます。第一回学術大会は九州大学で開催(参加者757名)されました。ジェンドリンが特別講演を行っていました。しかし講演の内容は全く思い出すことができません。彼が意外と若かったということと、懇親会の時に大きな和太鼓を叩いていた姿はよく覚えています。大会実行委員長は成瀬悟策先生でした。そして大会事務局は助手と私たち大学院生がお手伝いをいたしました。
 あれから40年近くがたちました。自分がこの学会のお世話をすることになろうとは夢にも思いませんでした。初代理事長だった成瀬悟策先生も、95歳の生涯を閉じられました。河合隼雄先生をはじめ、日本心理臨床学会の礎を築いてきた先生方も、鬼籍に入られた方が多くいらっしゃいます。
 心理の資格をめぐっての40年間だったのかもしれません。やっと2018年から国家資格の公認心理師が認定されるようになりました。この国家資格は、紆余曲折しての誕生であり、多くの先達の熱意と努力の結晶だと思います。
 発足当時の大会運営は担当大学に大きく依存していました。パソコンも十分ではなく、ましてEメールもありませんでした。とにかく手作り感あふれる学術大会でした。今や会員数は2万9000名を超え、心理学関係では最大の学会となりました。とても大学だけでお世話できる規模ではありません。現在では、事務局員6名が様々な業務を担当しています。2020年は横浜国立大学、2021年はお茶の水女子大学が、学術大会の担当校になりました。いずれも会場はパシフィコ横浜になります。40周年に向けての企画も検討しているところです。会員の皆様とともに日本心理臨床学会のこれまでを振り返り、あらたな心理臨床学の研究と実践のあるべき姿を考える節目にできればと願っています。
 残念ながらジェンドリンも2017年に鬼籍に入られました。もし彼が生きていて来日されたら、何と言ってくれるのか、もう一度特別講演を聞いてみたい気になりました。
(副理事長 井村 修)

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