当事者に役立つ心理教育 感覚過敏への対処ーちょっと繊細な”自分さん”と上手に付き合うために
著者 立命館大学総合心理学部 三田村仰
〝自分さん〟と上手に付き合うために
自分自身がどんなときに敏感になってしまったり、どんなときに楽しさややりがいを感じるのか、そして自分にはどんな工夫が合っているのかを知っておくことはとても役立ちます。自分自身、ここでは”自分さん”と呼ぶことにしましょう、との上手な付き合い方を見つけることが大切です。なんせ、自分さんとはこれからも長い付き合いになるでしょうから。
”自分さん”がちょっと繊細だったりして、何かのラベル(例:HSP Highly Sensitive Person)に当てはまっているように感じることがあるかもしれません。「自分だけじゃなかったんだ!」「こういうことだったのか!」という”納得感”をその体験は与えてくれるかもしれません。でもそれはまだスタート地点に立っただけのことです。人生は流れています。立ち止まらずに、歩を進めましょう。”自分さん”との上手な付き合い方を探るのです。
簡単なアイデアとして
”自分さん”を悩ます人物や場所、状況、刺激があるならば、そこから適度に距離をおいてしまうことが簡単な場合もありそうです。そうするべき意味もなく、ただ苦しい場に自分を留めておくのは、”自分さん”をいじめているのと同じかもしれません、まずは”自分さん”という人を大切に思いやりたいところです。騒がしい刺激が溢れるとき、テレビのチャンネルを変えたり、SNSからログオフしたり、人混みを避け、それが有効であれば耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを奮発して購入し使ってみるのも賢いやり方です。
もう一つ別の方法は、これまで避けていたものごとにあえて、全身で向き合ってみるやり方です。少しずつ、守ることなく、居直って全身で刺激に向き合ってみる方法です。これはエクスポージャーと呼ばれる方法で不安や恐れの気持ちと上手に付き合うための科学的に確実な方法の一つです。ちょっと潔癖だったり、人前が恥ずかしい、心臓がどきどきする、などの不安などに有効なことがわかっています。”自分さん”にそれが合うかどうか試してみるのもいいかもしれません。
旅はまだこれから
そして、ここで何より大切なお話です。あなたは限られた人生の時間をどのように使いたいでしょう? “自分さん”がもつその敏感さ/繊細さと共に、あなたはどんな自分でありたいでしょう? 「敏感さ/繊細さ」というラベルを見つけたのは幸運だったかもしれません。でも、新しい旅はここからです。あなた自身にとっていちばん役立つ工夫を探していきましょう。
文献
飯村周平(二〇二一)「HSP(Highly Sensi-tive Person)の考え方― 対人社会的環境という視点からの考察」臨床心理学. 21(2).