カウンセラーのためのアサーション 平木典子・沢崎達夫・土沼雅子〔著〕  金子書房、二〇〇二年

カウンセリングでのコミュニケーション

 カウンセラーとは何をする人でしょう。いろいろな違いを超えてあえて一言でいうならば、相談に来た人の話をよく聴いて、よりよくわかるために質問し、知識や経験に照らし合わせて考え、話されたことやその人について自分の思うことを正直に適切に言う人です。知識や経験を身に付ければいいのね、あとは簡単、と思われましたか? そうでしょうか。皆さんは日常の人間関係の中で「相手の話をよく聴いて、思うことを正直に適切に言」えていますか? これは案外簡単ではありません。
 ひとは、これを言ったら相手は気を悪くするかもしれない、相手に馬鹿にされるかもしれない、間違っていたらどうしよう、自分が不利になるかもしれないなど、さまざまな心配や思惑を持ちます。そして、思っているけれど言わないとか、相手が気をよくしそうなことだけを言うとか、心にもないことを言うとか、そんなこともあるでしょう。
 でも、カウンセリングでクライエントが聞きたいのはおだてや気休めではなく、カウンセラーの目を通して自分がどう見えるのかであり、クライエントはそれを手掛かりに自分自身を知り確かめていくのです。ですから、カウンセラーは率直に思うことを伝えられなければなりませんし、そのためには、自分が何を感じているかがちゃんとわかること、それをなるべくぴったりとした言葉で表現すること、そして適切なときに適切な言い方で相手に伝えること、ができなくてはなりません。


改訂版 アサーション・トレーニング――さわやかな〈自己表現〉のために 平木典子〔著〕  金子書房、二〇〇九年

アサーションというコミュニケーション

 カウンセラーにとって、一人ひとりの個性を生かしつつも、クライエントに有益なコミュニケーションをとるように努めることは必須です。そのために参考になるのがアサーションの考え方です。アサーションとは、自分も相手も大切にしつつ、率直に自分の気持ちや考えを伝えて、異なる人同士の相互理解の上に協力や共存を図っていこうとするコミュニケーションを言います。『カウンセラーのためのアサーション』ではカウンセラー自身のため、またクライエントのためにそれをどう役立てられるか、についてわかりやすく説明されています。ひとの生きづらさを理解するヒントにもなります。
 カウンセラーに興味があるかにかかわらず、自分の日常の人間関係に難しさを感じている、あるいはもっと気持ちよく人と付き合いたいと感じている方には『アサーション・トレーニング』をお勧めします。うまく話せないのはどうしてか、またそれを変化させるにはどうしたらよいかが説明されています。

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