カムアウトとは?
カムアウトとは、カミングアウト(coming-out)の略です。「comingoutofthecloset」=「自身を隠していたcloset(押し入れ)から外(コミュニティ)に出てくるということを示していましたが、自身の性的指向・性自認について明らかにするという意味として使われるようになりました。現在はそのような本来の意味だけでなく、公にしていなかった秘密、特に、他者に知られることがマイナスになるかもしれないリスクのある自身の属性や事柄について他者に打ち明ける時に使う言葉でもあるでしょう。
秘密を抱えて生きること
カムアウトしにくい秘密を抱えていること自体がストレスになることは想像に難くありません。例えば、レズビアンであることを周囲に言っていないAさんがいるとします。カムアウトしないことで、周囲の人はAさんを女性であるだけで「異性に恋愛・性的関心のある人(異性愛者)」と捉え、それを前提としてAさんとコミュニケーションをとる人も多いでしょう。時に、LGBTQ+当事者でないとみなされるためにLGBTQ+に対する否定的な言動への同調を求められるかもしれません。そのような環境でAさんはその場に適応するために「異性愛者のフリ」をすることを強いられてしまいます。本来のAさんの自然な生活や感情の表現を抑圧することは心理的な負荷がかかりますし、その「フリ」を続けることで、Aさんは周囲の人にリアルな自分を知ってもらえない寂しさや孤独感を感じずにはいられないでしょう。相手が親密な人であるほど欺いているような感覚になるかもしれません。そして、Aさんはカムアウトを考え始めます。
カムアウトの意味
当事者はカムアウトする/しないを、状況や相手を見て、注意深く選択しています。カムアウトは「実は…」と打ち明けるその瞬間のことだけではなく、そこに至るまでのプロセスの全体を含めて考えるべきでしょう。相手が自分を受容できるフラットな価値観を持っているのかどうか、信頼できるのか、自身だけでなく第三者に向けた相手の言動を含めて吟味するプロセスを経て、カムアウトの言葉を発するに至ります。
しかし、カムアウトは単に「自分は同性愛者だ」「私はレズビアンだ」という言葉を発することだけで完結しません。その言葉がその場の状況や相手との関係性において意味を持たなければなりません。そして、当事者がカムアウトに託す意味も様々です。自分の偽りない姿を相手に伝えることで、その相手との関係性を結び直したい・さらに深めたい、もう「フリ」をしなくても良いように自分への捉え方を変えて欲しい、これまでの自分への扱いが不当だと理解して欲しい、などその場の状況や相手との関係性で異なります。
そして、カムアウトの反応が明確な拒否や否定ではなくても、「そんなの大したことじゃない」など、カムアウトの意味や重みを受け止められない時、関係性や場において何の変化もなく「なかったこと」にされてしまう時にカムアウトが「意味がなかった」と当事者は落胆することもあります。カムアウトは個人のアクションのみで完結せず、カムアウトを受け取るその人も重要な働きをしています。
カムアウトの言葉をその人が聞いた時、当事者はリスクを感じながらも、自身のカムアウトの意味に応え得る相手としてその人を捉え、信頼し、希望を抱いています。カムアウトを受け取る側はその真摯さに応える準備があるでしょうか?その準備が皆にあり、カムアウトの営みへ恐れなく参加できることが、多様性のある世の中を作るのでしょう。