ゲーム実況やeスポーツの台頭

 インターネットやスマートフォンが子どもたちの日常にも浸透し、低年齢化しています。YouTuberやeスポーツ選手は昨今子どものなりたい職業の上位に入ってくることもあり、その存在感を増しています。YouTuberの中にはゲーム実況というジャンルで視聴者からの人気を得たケースも見られ、ゲームは子どもたちの日常であり、目指す職業のひとつにもなっています。

WHOはゲーム依存を病気と認定

 一方で、2019年にはWHOがゲームへの過度の依存について、ゲーム障害という病気として認定し、その診断基準が2022年より治療現場でも用いられるようになっています。筆者も、ゲームへの依存について、2003年に調査研究を開始しましたが、20年前より世界各国の臨床心理学や精神医学の研究者が問題意識を徐々に共有し、病気としての治療の必要性がWHOにより認定される流れとなりました。特に問題意識の中で共通していたのは、インターネットに接続されたオンラインゲームの特性が依存傾向を助長したことです。ゲーム内の登場人物がコンピューターから人間となることで、ゲーム内の人間関係への依存が生じることや、ゲーム自体にも更新性が生まれ、区切りはあっても提供終了しない限りエンディングがない、「終わりの無いゲーム」が登場しました。さらにはギャンブル性のあるガチャでキャラクターやアイテムを獲得するゲームが登場したことも依存性を高める要因のひとつとなり、オンラインゲーム登場前のプレイ環境とは大きく変化しました。
 ゲームをすることが病気とされるには、その行為が社会生活や家庭生活に過度な悪影響を及ぼすことが明らかである必要がありますが、悪影響の主な内容は「昼夜逆転により朝起きられない」「学校を遅刻もしくは欠席する」「家族や物に当たる」等になります。昼夜逆転が深刻化して不登校やひきこもりとなることもありますし、ゲームを家族が無理にやめさせようとして家庭内暴力が生じるケースも見られます。

「気づく」「聴く」「つなぐ」

 子育ての中で、ゲームへの依存に対処していくには、まず、気づきが必要です。ゲームをプレゼントして、「あとは自由に」ではなく、コミュニケーションの中で、楽しさも含め、どのようなゲームをどんな環境でどれぐらいの頻度と時間で遊んでいるのか、オンラインでのコミュニケーションがあるか、親密な人間関係が生じているのかなどをつかみながら、依存のリスクに気づき、どういう気持ちが長時間のプレイに繫がったのかなどをまずは聴くことが必要です。聴くことが難しい時には臨床心理士や周囲のキーパーソンに頼ることもできます。特に、依存弱者ともいえる、初めてオンラインゲームに触れる子や注意欠如・多動症や強迫性障害を患う子の場合は注意深く関わることが求められます。もうすでに、社会生活や家庭生活に支障がある場合には、久里浜医療センター等全国のゲーム障害に対応する専門医療機関での治療につないでください。

まずは大人が実践を

 筆者は20年前、新しく浸透し始めたオンラインゲームについて、子どもたちが上手く適応し、依存問題自体が収束する可能性も想像しましたが、残念ながらアルコールやギャンブル等と同様に依存症のひとつとなってしまいました。子育ての中で、幼児期からの動画視聴なども含めスクリーンタイムをできる限り避け、ゲームの利用について家庭内のルールを決めて依存を予防することが肝要です。その際は、まず大人が実践して見せることが効果を高める秘訣と言えます。

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