女性を好きな気持ちに気づいたけれど、まだ誰にも話していない、あなたへ。もしあなたが、自分がレズビアンである事を受け止めにくかったり、他の人と会うための一歩を踏み出せずに悩んでいたとしても、それはあなたのせいではありません。

見えにくい存在、周りからも自分でも

 LGBTという言葉は知られるようになってきましたが、レズビアン、女性の同性愛者が身近にいるという人は、今でもまだ少ないでしょう。日本の社会の中で、レズビアンは存在しないもの、あるいは過剰に性的なイメージとして扱われてきた面があります。その状況で暮らしていく中で、当事者自身も、自分のセクシュアリティに気づく前から、レズビアンに対するネガティブなイメージを自らの価値観として取り込んでしまいます。そのため、女性への恋愛や性愛を自分のものとして受け止めにくかったり、レズビアンの人たちが現実的、日常的に生活しているイメージが持ちにくかったりするのです。

出会い、語りからうまれるもの

 SHIPでは女性が好きな女性が集まり、話せる場を16年前から毎月開催しています。そこでは、自分以外の当事者と初めて会う方もよく来られます。実際に会って話すと「こういう気持ちは自分だけではなかったんだ」「自分以外にも本当にいたんだ」と実感し、日頃話せなかった自分の気持ちや体験を共有する事ができます。同じレズビアンの人と出会い、思いを共有する事で、孤立感が減り、安心感が得られる、そうした場面で体験される事は、16年前も今でもあまり変わらないようにみえます。
 SHIPのようなコミュニティで自分を語る体験をする人もいれば、SNSでつながった相手に自分の事を伝える人もいます。またカウンセラーに対して、初めてセクシュアリティを打ち明け、自分の気持ちを整理していく人もいるでしょう。レズビアンである事で生じる悩みや生きにくさを話す事もあれば、好きな人の話題で盛り上がったり、恋人と過ごした楽しい思い出を話す事もあります。それが悩みや相談でも、楽しい事や嬉しい事でも、女性を好きな事を隠さずに自分自身を語る時に、相手との関係性の中で、レズビアンである私を形作っていくのです。

私たちはここにいる

 身近には感じにくいかもしれませんが、インターネットが普及するよりも前から、レズビアンの人たちは同じ仲間とのつながり、コミュニティを作り、自分たちの言葉や人生を紡いできました。この社会で「女性」と「同性愛」という二つのマイノリティを生きる事、そこからうまれる悩みや生きにくさに対して、思いを共有し、それを乗り越えていくための知恵を出し合ってきたのです。
 レズビアン、女性が好きな女性たちも多様なあり方があります。同性のパートナーと生活する人、子どもをうみ、育てる人、友人や仲間とのつながりを持って生きていく人。そこには、一人一人の多様な生き方があるのです。
 様々な人と出会い、語り合う中では、共感だけではなく、自分と異なる感じ方や考え方にふれ、違和感を持つ事もあるかもしれません。しかしそれもまた、レズビアンである「私自身」を、より深く、豊かに形作るきっかけになる事でしょう。

まだ会ったことのない、あなたへ

 いつか時が満ちて、自分の事を誰かに話してみようと思う日が来たら、同じ仲間と会ってみようと思う日が来たら、あなたの話を聞かせてください。レズビアンとして生きるあなたの、あなただけの話を聞かせてもらえる日が来る事を待っています。

●参考文献 パフスクール(2017)『日本Lばなし~日本のレズビアンの過去・現在・未来をつなぐ~』パフスクール

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