徐凱文先生は精神科医であり、北京大学の臨床心理学分野で博士号を取得しました。同時に、大儒心理の創始者でもあり、中国生命関懐協会社会心理服務工作委員会の主任委員です。今回、徐先生にインタビューする機会を得て、中国の臨床心理の現状について伺うことができました。

Q:日本の読者の皆様に、自己紹介をお願いします。

A:私は臨床心理学の博士であり、同時に精神科医です。北京大学で修士号と博士号を取得し、卒業後は同大学の心理カウンセリングセンターで働いていました。その後、北京大学を退職し、現在は大儒心理という私設の心理相談機関を設立しました。公立の精神病院で8年間勤務し、また北京の民間の心理医療施設でも兼任していました。さらに、中国心理学会の登録システムの秘書長を12年間務め、中国心理学会を含む複数の協会で委員や常任委員を歴任しています。さらに、私は以前大学で教育相談に携わっており、現在は私設の心理カウンセリング機関を運営しています。

Q:現在中国で一般的な治療アプローチは何ですか?

A:現在、主要な治療アプローチは、精神分析、認知行動療法(CBT)と家族療法の3つです。国内で最初に影響を受けたのは中德班(ドイツ心理療法研究所が優れたドイツの心理療法専門家を派遣し、中国で講義とトレーニングを行うもの)であったため、現在最も影響力があるのは精神分析です。次に影響力のあるのがCBTだと思います。基本的に、3つの治療アプローチが共存しています。
 中德班は最初に1988年に現れ、本格的に始まったのは1998年です。中德班は短期間のトレーニングモデルであり、4年間に渡り毎年に集中的に約7日間の講義が行われ、受講者は数十日間のトレーニングを受けます。
 以上は現在中国の心理分野発展の傾向ですが、最終的には中国独自の道を歩むと思います。それは中国の文化にフィットする方法であるべきです。私は最終的に、特定の流派ではなく、中国文化と国情に基づく心理療法、心理健康の戦略が開発され、同時に中国市場で受け入れられ、認められることを期待しています。

Q:中国の心理カウンセリング資格制度について教えてください。

A:中国の心理カウンセリングの資格体系は元々、二級および三級の心理師の資格がありましたが、2017年に試験が停止されて以降、業界には資格制度が欠けています。その後、中国心理学会の臨床心理学登録システムが始まり、私は2009年から2021年まで、中国心理学会の臨床心理学登録システムの秘書長を12年間務めました。この組織は、最初はアメリカなどの西洋の制度を参考にし、登録者に臨床心理学または関連する心理学分野での修士以上の学位を登録条件としていました。しかし、登録者数が少なかったため、条件が緩和され、助手心理カウンセラーの登録制度が増設されましたが、登録者数は依然として5000人に満たない状況です。
 近年この登録制度の発展状況は芳しくなく、特に私が秘書長を辞任した後は、より保守的になっている傾向があります。5000人規模の登録がありますが、中国はこれよりもはるかに多くの心理職従業者を必要としており、資格管理の面にも問題が存在しています。ただし、全国的な基準が制定されていることは一歩前進です。個人従業者登録基準、組織登録基準、修士および博士課程の人財育成計画基準、および継続教育プログラムの基準などが制定されました。同時に、登録委員会は倫理規定を策定しました。最初版は2006年に制定され、修正版は2016年に制定されました。これも重要な功績です。ただし、全体的な業界監督は不十分であり、資格証明書制度以外にも改善すべき点があります。

Q:日本の読者に伝えたいことはありますか?

A:進歩は絶えず疑問を投げかけ、反省することから生まれます。東洋文化に適合し、国内の状況に合った心理療法のアプローチや心理健康の策略が、単純な模倣よりも重要かもしれません。アメリカの心理学者は素晴らしい仕事をしていますが、アメリカの心理障害の罹患率は世界でトップであり、経験が多いということが必ずしも最適な解決策を意味するわけではありません。人工知能の時代において、インターネットが人類に与える影響はますます顕著になり、精神的および心理的状態への影響も重要な課題となっています。我々は文献を読むだけでなく、西洋から学び、革新を行う必要があります。学術的、ビジネス的、または産業の観点から見て、メンタルヘルスのニーズは膨大ですが、世界的なメンタルヘルス産業の発展は理想的とは言えません。したがって、私はこの領域にはまだまだ探求と革新の余地があると考えていますが、基本原則を守りながら革新を行う必要があります。

徐凱文:大儒心理の創始者。精神科医師。北京大学の臨床心理学博士。中国生命関懐協会社会心理服務工作委員会の主任委員。

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