心理臨床なう 市民ボランティアによる里親家庭で暮らす子どもへの支援
―子どもと遊びプロジェクト
著者 SOS子どもの村JAPAN 橋本愛美
4万5000人の家族と暮らせない子どもたち
わが国には、親の病気や虐待など、様々な理由で家族と暮らせず、里親や児童養護施設のもとで暮らす子どもが約4万5000人います。その子ども達は、実の親との人生早期の分離を体験しているだけでなく、中には虐待などの不適切な養育を経験してきた子どももいます。そのため、他者への基本的信頼感の形成不全、トラウマや発達特性にもとづく様々な困難を抱えていることも少なくありません。このような、生き延びることや様々な環境に適応することにエネルギーを費やしてきた子どもたちの多くは、国連子どもの権利条約(第31条)にも明記されている自由な「遊び」の体験を奪われてきています。
主体的な「遊び」を中心にした支援
私が所属するSOS子どもの村JAPANは、「No child should grow up alone ~子どもが孤独に育つことがない社会へ」をスローガンに、子どもの権利保障を軸にした里親による家庭養育や、家族分離の危機にある子どもと家族への支援を行っています。その活動の一つ、里子のための遊びプログラムが発展し、2017年に「子どもと遊びプロジェクト(以下、こぷろ)」という市民団体が誕生しました。「こぷろ」が提供する遊びの場には、研修を受けたボランティアサポーターがいて、「参加する大人のルール」があります。子どもの遊びたい気持ちを阻害せず、しかし心と身体の安全を守るよう配慮しながらともに遊びます。「こぷろ」では、自分の興味関心にそった自由な「遊び」が大切にされています。
多様な大人が関わり、安心でしる社会を体験する
「こぷろ」のボランティアサポーターの年齢層は18才から60才以上と幅広く、心理臨床家、社会福祉士、保育士などの専門家だけではなく、学生、会社員、カメラマン、フリーター、退職後のアクティブシニアなど多種多様です。しかし、「遊び」の中では子どももどんな大人もあっという間に対等な関係を築くことができます。「こぷろ」は、「遊び」を通して子どもも大人も仲間になり、そのことで里親家庭への理解者が地域に増え、新しい「居場所とつながり」ができていくことを目指します。
そして、「遊び」を通して体験する他者との情緒的つながりや楽しさが、他者への不信感や大人になることの不安を抱える子どもにとって、安心できる大人や社会があることを感じられる体験になればと願っています。
最近では、この遊びプログラムを経験した高校生による「ユースと遊びプロジェクト(ゆぷろ)」も誕生しました。遊びを通してつながった子どもが若者となり、思春期や自立の困難をともに乗り越える仲間になっていきつつあります。「こぷろ」から「ゆぷろ」へ、子どもの成長とともに育っていく「こぷろ」を、どうぞ応援いただければ幸いです。
● 問い合わせ先office@ko-pro.org