児童相談所心理職の業務

 児童相談所(以下、児相)は、原則一八才未満の児童に関わる多岐にわたる相談を受けていますが、現在、主に何を業務にしているかといえば、虐待対応と答えざるを得ないでしょう。
 虐待事例では、虐待行為の再発を防ぐことが目的となりますから、主な支援対象は虐待者(大人)となり、その支援は「児童福祉司」が担うことになります。児相における心理職は「児童心理司」という名称で呼ばれ、児童に関わる担当として業務を行い、必ず支援上のパートナー(主に児童福祉司)がいることが一つの特徴になっています。虐待事例では、必ずしも児童が支援対象になる訳ではなく、虐待者だけへの支援で終了することもあるので、児童心理司が関わらない虐待事例もたくさんあります。
 児童心理司は、被虐待体験の影響や児童の特性についてアセスメントし、以後の児童の養育について児童福祉司と共に虐待者にアドバイス等を実施します。支援が継続する場合は、アセスメントに基づいた心理的アプローチを実施しますが、神奈川県の場合、現実には一~二カ月に一回程度の面接となり、児童の状況確認で終わってしまうことも少なくありません。

一時保護と公的保護(里親委託・児童福祉施設〔以下、施設〕措置)

 児相は、虐待内容が重篤な場合、児童の安全を担保するため、虐待者と生活の場所を分離するために、児童を一時的に保護(一時保護)したり、その後も児童の安全が確保できない場合は、公的保護を行います。こうした事例では、児童の傷つきが大きいために児童心理司が継続的に支援することが多くなります。
 近年、被虐待によるトラウマの影響、愛着関係の希薄さ、対人関係の未熟さ等により里親や施設で、大人や他の児童に対して不適切な言動が表出され、対応に苦慮するということが多くなっています。こうした言動に対して児童心理司は、直接、児童へ心理的アプローチを実施すると共に、関係者に対して背景となっている体験・症状の意味の説明(心理教育)や児童にどのように関わっていけばよいのかのアドバイス(コンサルテーション)も行います。
 また、乳幼児から施設入所した児童の中には、なぜ自分が施設に入所しているのか、その理由がよく理解できておらず、それまでの人生が断片化している場合もあり、児童なりの物語を再構築するためのライフストーリーワーク(LSW)を児童福祉司や関係者と協力しながら実施していくこともあります。

長い時間軸での支援

 児相における児童への支援のうち公的保護のような児童の発達を保障していく必要がある事例の場合、児童の発達時期に応じた支援が必要であり、それは児童心理司の支援だけでは十分ではなく、関係機関との協働が必然であり、児童の成長を信じつつ見通しを持ちながら息の長い支援が必要であると感じています。

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