少年鑑別所とは

 少年鑑別所とはどのような施設で、何をしているのか御存じでしょうか。
 少年鑑別所は、少年鑑別所法に基づき管理運営されている法務省所管の施設であり、各都道府県に設置されています。少年鑑別所には、心理技官と呼ばれる心理職の職員がいます。心理技官は、少年に対して、面接や各種心理検査を行い、知能や性格等の資質上の特徴、非行に至った原因、今後の処遇上の指針を明らかにします。また、審判決定により、少年院に送致された少年や保護観察処分になった少年にも、専門的なアセスメント機能を活用して継続的に関与します。その他、地域の非行及び犯罪の防止に貢献するため、一般の方からの心理相談に応じたり、学校等の関係機関と連携した非行防止や青少年の健全育成のための取り組みにも積極的に関与したりしています。
 こうした専門性の高い業務に携わる心理技官には、相応の知識や技能が求められますので、その育成について御紹介したいと思います。

心理技官の育成

 心理技官は、国家公務員総合職試験(人間科学区分)または法務省専門職員(人間科学)採用試験(矯正心理専門職区分)の合格者から採用されます。採用後は、心理技官として必要な知識や技能の習得・向上のための体系的な研修が用意されています。まず、採用後すぐに、矯正職員として、また心理技官としての基礎を学ぶ研修(おおむね三か月)があります。そして、採用五年目には、中堅職員としての知識や技能を身につける研修(おおむね三か月)、一〇年目には、さらに高度な知識や技能を習得し、スーパーヴァイザーとしての素養を身につける研修(二週間)があります(総合職試験採用の場合、研修を受ける時期や期間は若干異なります)。これらは原則として、研修所に宿泊して行う集合研修であり、全国から集まった心理技官と切磋琢磨しながら研鑽を積むとともに、同じ期間に研修を受ける他職種の職員とも交流を深め、研修同期との横の連携を築きます。
 また、実務においては、採用後二年間はスーパーヴァイザーがつき、面接、心理検査、ケースアセスメント、鑑別結果通知書の作成など、鑑別業務全般について、じっくりと指導を受けます。他職種や他機関との連携の取り方、心理専門職としての基本的態度や倫理観などについても、スーパーヴァバイザーをはじめとする先輩職員から学んでいきます。
 東京少年鑑別所におけるスーパーヴィジョンについて、簡単に御紹介します。当所は、全国の少年鑑別所の中で最も多くの心理技官を採用しており、心理技官の育成に特に力を入れています。心理技官の育成や研修に係る業務を総括する﹁鑑別指導官﹂二名を中心としたベテラン技官がスーパーヴァイザーを担当し、二年間のスーパーヴィジョンを五期に分け、期ごとにスーパーヴァイザーが替わります。各期の終了時には、到達度チェックリストなどを用いて成長を振り返りながら、今後の課題等について検討し、その内容は、スーパーヴァイザーから次期スーパーヴァイザーに引き継がれます。多くのスーパーヴァイザーから学びつつ、継続性のある指導を受けることができる仕組みとなっています。

公認心理師実習の受け入れ

 少年鑑別所は、心理臨床家を目指す人の養成ということで公認心理師実習の受け入れにも力を入れています。司法・矯正領域の実習施設の一つとして少年鑑別所が挙げられているため、実習の依頼は年々増えており、私たちとしても矯正施設の心理職の仕事を知っていただく良い機会となっています。当所における公認心理師実習は、通常、少年鑑別所の役割や心理職の業務についての講義の後、実際に施設を見学していただき、質疑応答を含めて半日程度の実習を行っています。現在は施設内での新型コロナウイルス感染症感染防止のため、大学に出向く形での実習になっていますが、スライドで少年鑑別所の様子を御覧いただいたり、模擬事例による事例検討を行ったりと、工夫しながら取り組んでいます。

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