臨床心理士も公認心理師も養成

 島根大学は、「臨床心理士資格認定協会第一種指定大学院」として20年以上の実績がありますが、現在は、臨床心理士と公認心理師の二つの資格の心理職を養成しています。学部教育から一貫して、実際に現場で心理職としてしっかりと臨床ができる人を養成するということを目標にしています。
 人間科学部心理学コース(学部)では、心理査定や心理研究法、グループ・アプローチやロールプレイでのカウンセリングの演習などの臨床心理学の分野だけでなく、発達心理学や社会心理学、認知心理学など、幅広い心理学を学ぶことができます。そして人間社会科学研究科臨床心理学専攻(大学院)では、本格的に心理臨床を実践的に学ぶことになります。
 大学院には、人間科学部の出身者だけでなく、他大学や心理以外の学部を卒業した方や、教員などさまざまな職種に就いておられた方、そして他職種での経験で公認心理師を取得した方などが、しっかりと臨床を学びたいと臨床心理士の資格取得を目指して入学されています。

医学部と附属学校にも分室がある「こころとそだちの相談センター」

 さまざまな臨床関係の授業を大学院では履修してもらいますが、とにかく相談スタッフとして臨床実践にガッツリ取り組んでいただくことを大切にしています。大学院の内部実習施設の島根大学こころとそだちの相談センター(以下、相談センター)は、松江キャンパスにある本室のほか、出雲キャンパス(医学部)と附属学校園にも分室があります。(https://www.psy.shimane-u.ac.jp
 相談センターでは、院生はもちろんのこと、臨床の教員が全員、相談スタッフも兼ねていて積極的にケースを担当しています。松江本室の相談センターには、相談室やプレイルームが全部で九室ありますが、教員の研究室も院生室もすべてセンター内にあります(そして教員は、プレイセラピー以外は、自分の研究室で臨床心理面接をしています)。そのため院生は常に臨床の空気を吸いながら過ごすことになりますので、心理面接が治療的なものとして成り立つためには、面接外でスタッフがお互いに助け合うことが必要なのだということなど、自然と心理臨床をする人としての心構えが身についてくるように思います。

 学校やクリニックからの紹介やクライエントのクチコミに支えられて、相談センターでは年間述べ7000件を越える相談を実施しています。大学院生はそのなかで約1100件を担当しており、修了するまでの2年間で、多い人は7~8人のクライエントとお会いすることになります。
 そしてすべての担当事例に対して、丁寧な指導体制がとられています。どの教員にスーパーバイズを受けてもいいので、院生が自由に教員に指導を申し込んでサポートを受けています。毎週行われるカンファレンスでは、院生が担当した事例について、院生や教員が全員参加するなかで、見立てや連携のあり方や今後の対応などについてみんなで検討しています。
 このように手厚いサポート体制を整えていますので、院生は臨床の実践を通して、臨床心理についてのさまざまな知見を体得していくことができます。

外部での豊富な実習機会

 内部実習施設の相談センターだけでなく、外部でも臨床に触れる機会が充実しています。高校での生徒に対する継続的なメンタルサポートや、単科の精神病院、総合病院のなかの精神科、鑑別所や障がい者施設や児童養護施設など、多彩な臨床現場を知るチャンスがあります。また多数の臨床心理士が在籍しているクリニックでのケースカンファレンスへの参加など、臨床心理に関してあらゆる位相のことが体験できるように配慮しています。

卒後教育も充実

 院の2年生と修了生を対象として、臨床心理士と公認心理師の受験対策のための勉強会をしています。遠方に就職した修了生はオンラインでも参加できるようにしています。
 また年に2回、外部講師を招いての最新の臨床心理についての知見の講義とケース検討の研修会を開催し、卒後教育の機会を提供しています。

教員も院生も同じ臨床家仲間として

 院生と教員は、訓練中で指導を受ける側と、臨床を指導する責任がある側という大きな立場の違いはありますが、相談センターでともに日々、心理臨床に取り組んでいる臨床家仲間という意識があります。クライエントを中心に置いて、院生と教員がともに臨床について学び会うことができるような場を提供していけるよう、これからも努力していきたいと思っています。

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