はじめに

 スクールカウンセリングや学生相談と共通する点はあるものの、予備校のカウンセリングには、予備校という場ならではの特色があるように思います。カウンセリングにもちこまれる主訴は多様ですが、背景に受験という大きなインパクトをもった現実があることが影響しているといえます。本稿では、予備校のカウンセリングで話題にあがることの多いテーマとして、「不安」と「親子関係」を取り上げてみたいと思います。

不安のマネージメント

 本気で何かを目指すということは、うまくいかないかもしれない不安と向き合うことでもあります。この意味で、まったく不安のない受験生はいません。さらに、家庭の経済事情などから、限られた状況の中で、どうしても結果を出さなければならないというプレッシャーを抱えている受験生も少なくありません。そのため、強い焦りや不安を抱え、非常に切迫した状態で来談するクライエントが多いというのが予備校カウンセリングの特色です。こうしたこころからあふれ出しそうな不安をしっかりと受け止めることが、カウンセラーには求められます。いつ頃からどのような経緯で不安が生じているのか、不安が強まる背景に何があるのかということをしっかりと見立て、その理解を共有しながら不安に輪郭
をつけていく作業が大切です。そのうえで、「どうしようもない不安」を「対処可能な課題」として捉えなおし、具体的な対処法を一緒に考えていきます。

親子関係の調整

 大学受験は進路を決めていくプロセスでもあります。そこで、親子の考えがぶつかることも少なくありません。年齢的に親からの自立を模索する時期でもあるため、受験を契機に親子の葛藤が表面化することがよくあります。こうした背景から、予備校のカウンセリングには、保護者もよく来談します。予備校のカウンセリングという設定の中で、親子の葛藤そのものを解消することは困難ですが、相手に対するさまざまな気持ちやお互いの考えのギャップをまずは丁寧に聴きとり、進路選択にあたっての現実的な落としどころや、相手へのアプローチの仕方などを模索していきます。

おわりに

 予備校のカウンセリングの特色としてふたつのテーマをあげましたが、もうひとつ大きな特徴として、数回以内のごく短期の関わりとなることが多いということがあげられます。そのため、この設定の中でできることの限界を常に意識しながら、現実的な目標をクライエントと共有すること、受験生と日常的に接する予備校スタッフと連携していくこと、必要に応じて他機関にリファーすることが非常に重要となります。
 限られた期間や状況といった現実に向き合いながら、よりよい形を模索していくという意味で、受験生と予備校カウンセラーには重なる面もあるのかもしれません。

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