私にとってのこころのリフレッシュ方法は、ずばり「カフェめぐり」です。人によっては、「値段が高いだけ」とか「見栄えがいいだけじゃないの」とか、「何が楽しいのかわからない」なんて言われることもあります。趣味なんて往々にしてそんなものだと思いますが、昨今のカフェブームに反発心が芽生える方もいらっしゃるかもしれません。
さて、ではカフェめぐりの何がいいのか…。インスタ映え?コーヒーの味?ゆったりのんびりした雰囲気?自分のことを振り返ってみても、私自身何を求めてカフェに行っているのか、あまり考えたことはありませんでした。今回このような機会をいただいたので、私がなぜカフェめぐりをしたくなるのか考えてみたいと思います。
「カフェ」に求めるもの=現代人が求めているもの?
まずは最近の流行ワードを取り上げてみて、カフェとの関係を考えてみたいと思います。
ひとつめが、「エモい」。これは英語の「emotional」からきているというのが一説だそうです。「心が揺さぶられて、なんとも言えない気持ちになること」「ただ単に、嬉しい・悲しいという気持ちだけではなく、寂しい・懐かしい・切ないという気持ちや感傷的・哀愁的・郷愁的などしみじみする状態も含む」とネットでは書かれていました。
ふたつめが、「チル」。これも英語の「chill out」からきているようで、「まったりくつろぐ」という意味だそうです。自分の時間を大切にしたい若者の間で広まっている言葉で、ゆっくりくつろぎタイムの時に使う言葉と書かれていました。
みっつめが「映え」。「見栄えの良いもの」を表現する言語です。若者を中心に広がっている言葉で、「SNSや写真など、目にしたときに全体的に良く映っている状態」を指すそうです。
言葉の流行は、その時代の様相を反映していると思います。そう考えると、現代人(特に若者)は、激しい感情ではなく、なんとも言えないようなじんわりするような情緒を、まったりゆっくり求めているようにも感じられます。それを満たすための映え光景なのかもしれません。もちろんこれらを満たす方法はひとつではないでしょう。その一方で、雰囲気のいいカフェに行けばこれらに近い経験が、多少の気軽さを持って体験できるのではないでしょうか。

雰囲気のいいカフェって?
さらっと「雰囲気のいいカフェに行けば」と書きましたが、カフェといってもどこでもいいわけではないのが難しいところです。もちろん人それぞれ落ち着ける雰囲気や好きな感覚は違うと思いますが、私的には、一人でゆったりのんびり書き物でもできるところ、ぼんやり遠くを眺められるところ、できたら身体を脱力させられるような設えがあるところがいいのかなぁと思っています。コスパ(コストパフォーマンス)・タイパ(タイムパフォーマンス)が求められる今日。日々やることは山積みで、頭は回転しっぱなし。疲れをしっかり取る暇もないまま、毎日をこなしていかなくてはならないこともしばしばです。そんな中で、ゆっくりじっくり頭の中を整理させることができて、それにも疲れたら、脱力しながらぼんやり遠くを眺められること…。その隙間と余白のある時間と空間が、忙しない日々に癒しをもたらしてくれるのかもしれないなと感じています。
コーピングとしてのカフェめぐり
「ストレスコーピング」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか?ストレスコーピングとは、ストレスに対して、意図的に何か対処をすることです。認知行動療法の本をたくさん書かれている伊藤絵美先生によると「ストレスが溜まって、知らず知らずのうちに過食をしてしまうのは行動的ストレス反応ですが、こういうときは美味しいものでも食べて気を晴らすしかないなぁと思って、意図的に好きなケーキを食べるのはコーピング」だとおっしゃっています(伊藤、2011)。コーピング方法は、立派なことでも、高尚なことでなくてもよくて、ちょっとしたことでいいから意図的に使えるものを可能な限り増やしておくのがいいそうです。そういう意味で言うと、私の場合は「カフェ巡り」といえど、①わくわくうきうきするようなカフェを調べる、②そのカフェのオススメポイントを検索してチルできそうか想像する、③そこで何を飲んで何を食べるか考える(メニューもくまなく見る)、④いつだったら行けそうか考える(ついでにスケジュール整理をする)、⑤そうしているうちに以前行ったカフェを思い出し映え写真を見返して思い出に浸る、⑥次はこれを食べたい・飲みたいなと思い始める、⑦一緒に行ったら喜んでくれそうな人を思い浮かべる…と、7つのコーピングにつながっているということに気付きました。

底の底まで落ち込んでいる、どうしようもない怒りに苛まれて混乱状況に陥っている、などでなければ、大抵①〜⑦に浸っているうちに、気持ちが落ち着いてきて、さぁ、この妄想を現実にすべくがんばるぞ!となっています(現実に戻った時に、ふぅ…というため息が出ることもよくありますが…)。
カフェ空間とカウンセリング
こう書いてみると、やや非日常に近い空間で、落ち着いて、どこかに吐き出し(掃き出し)ながら、頭と心の整理をする…というところはカウンセリングと近いところがあるかもしれません。もちろんカウンセリングとなると、カウンセラーという聴いてくれる人がいるのですが、カフェ空間で得られるものやそこに求めるものは近いような気もしています。
私はたまたまカフェという空間が好きですが、公園でも海でも温泉でも、おうちの一角でも教室でも、ご自身の居心地のいい空間を見つけられて、ほんの少しまったりできれば、少しだけ人生にゆとりができるかもしれません。日々せわしないですが、私も人生のゆとりを見つけるため、次のお気に入りカフェを探そうと思います。
●引用文献
伊藤絵美(2011)『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1』医学書院