編集後記

 本号を編集するうえで私が大切にしたテーマは、「魅力の(再)発見」でした。社会の中であまり知られていない領域や、かつては注目されていたものの関心が薄れつつあるテーマについて、多くの執筆者の先生方に魅力あふれる原稿をご執筆いただきました。読者の皆さまにも、新しい発見や「こんな世界があったのか」という驚きを感じていただけるのではないかと思います。
 巻頭対談と特集1では、「社会的養護」を取り上げました。近年、やす子さんや横山裕さんの発信に代表されるようにテレビやインターネットでも社会的養護が取り上げられる機会が増えています。しかし、そこで働く心理職の仕事や、その魅力については、まだ十分に知られているとは言えません。特集1では、さまざまな現場で実際に活躍する心理職の方々にご執筆いただきました。これから進路を考える中高生や大学生の皆さんにとっても、新しい仕事の可能性を知る機会になれば嬉しく思います。また、当事者に役立つ心理教育では「トラウマ」を取り上げました。社会的養護のもとで暮らす子どもたちの経験や支援について、より身近に考える機会になることを願っています。
 特集2の「無意識のいま」では、心理臨床の歴史の中で大きな役割を果たしてきた無意識を改めて取り上げました。近年は脳科学や認知科学の発展によって、人が意識していない心の働きについて新たな研究が進んでいます。その一方で、心理療法の現場では、言葉にならない感情や繰り返される人間関係のパターンなど、無意識という考え方によって理解しやすくなる現象に数多く出会います。本特集を通して、無意識のもつ不思議さや面白さを再発見していただければと思います。
 また、西坂來人さんとの巻頭対談には、社会的養護への理解を深めるだけでなく、「心理臨床の魅力をどう社会に伝えるか」というテーマも込められています。心理臨床もその意義や魅力を社会に伝えていくことが求められている時代に入っているように感じます。本号が、そのことを考えるきっかけにもなれば幸いです。
 最後になりましたが、ご執筆いただいた著者の皆さま、企画・編集にご協力くださった皆さま、そして本誌をお読みくださる読者の皆さまに心より感謝申し上げます。今後とも『心理臨床の広場』をよろしくお願いいたします。
(広報委員 松本拓真)

事務局だより

 本誌がお手元に届く頃には、日本心理臨床学会第45回大会の対面大会を終えて、続くWEB大会開催を控えた頃と思います。皆様にとって、2026年度は、どのような年でしょうか。今年も後半になりました。新しい学び舎や職場で、仲間や教員など指導者との出会いや、長年の交流を続けてきた人との別れなども経験されていると思います。
 さて、わが国の経済状況といえば、今年になってもなお世界各地での戦火の影響を受けて不安定な状況にあります。2025年度の大会において、布柴靖枝先生(文教大学/国連NGO国内女性委員会副委員長)による特別講演「社会的脆弱性をかかえる人々への支援——家族支援から国際連合(国連)の活動を通して——」がなされました。多くの皆様から共感をえるご講演であったと思います。子どもの貧困は、世界全体で考えねばならない問題でしょう。
 本誌をお読み頂いています、将来心理臨床学を学ぼうとされている皆様、学生の皆様や他領域の実践家、先生方には、是非現代社会での「こころの問題」に目を背けることなく、人が生きていくために何が必要かを共に考えて頂けたら幸いです。
 日本心理臨床学会第45回大会のテーマは、「社会と心理臨床学——基軸からの展開」です。昨年度の大会で、心理臨床のこころはどのように伝承されていくべきかを議論した私たちは、さらに実践活動の幅を環境や地域での活動も含め、未来に向けて展開させていく使命を担っています。本学会の第8期の役員はこの春解散となり、第9期の役員によって引き継がれていきます。学会会員の皆様には、学術雑誌や本誌を通して、また大会の会場やオンラインで共に討議できるように、理事一同励んで参りたいと思います。
 学会運営にお気づきの点などがございましたら、事務局にご一報いただけますと幸いです。そして本誌に対しましても、ご意見をお寄せくださいますようにお願いいたします。
(財務担当理事/大会委員長 髙橋靖恵)

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