心理臨床家養成の歴史

 立命館大学の心理臨床家養成は、長年にわたる深い歴史と積み重ねの上に築かれています。その背景には、1990年設立の教育科学研究所を前身とする2000年の人間科学研究所開設に示されるように、心理学、教育、福祉を横断する対人援助・人間科学の潮流があり、その中で心理臨床家の養成が始まりました。
 2000年の心理・教育相談センター開設、翌2001年の応用人間科学研究科開設を基盤として臨床心理士の養成が開始されました。当初は第2種指定大学院として出発しましたが、カリキュラム調整を経て、翌年度から第1種指定大学院となっています。
 その当時、応用人間科学研究科は対人援助学領域と臨床心理学領域から構成されていました。カリキュラム編成においては、臨床心理学をひろく対人援助学に包括し社会的課題や隣接領域の人間諸科学と連携する方針を有し、また各領域の独自性を保ちながらも領域間の相互交流を重視する風土を持っていました。このような、臨床心理学に留まらない対人援助者として養成を行う方向性と、領域や分野を超えて交流を重視する気風は、現在にも続く立命館大学における心理臨床家養成の伝統であるといえます。
 その後、人間を総合的に探求し、心理学とその隣接分野との接続を重視する学部として2016年に総合心理学部が開設され、続いて人間科学を中心に据えた大学院として2018年に人間科学研究科が設置されました。この新しい体制の中、臨床心理士養成のみならず公認心理師養成も含む心理臨床家養成の体制が本格化していくことになりました。

本学の特徴

 立命館大学における心理臨床家養成は総合心理学部と人間科学研究科で行われており、相互の連携を基盤とした学部・大学院を通じての養成体制が確立されています。
 総合心理学部では、人間探求を目的とし、心理学諸分野のみならず人文科学や社会科学等の領域も含む多様な学びを深めることができます。心理臨床家を目指す学生においては、この学びの選択肢の中に公認心理師対応科目や対人援助に関する科目が準備されており、1回生から計画的に履修することが求められます。
 人間科学研究科は心理学領域、臨床心理学領域、実践人間科学領域の3領域より構成され、人間を総合的に理解し、研究と実践を往還しながら現代社会の課題に対応できる高度な専門性を身につけることを目指します。この3領域いずれにおいても公認心理師コースが設置されている点が本学の特徴であり、領域を問わず公認心理師の受験資格取得が可能となっています。さらに臨床心理学領域は臨床心理士第一種指定大学院の認定を受けており、公認心理師受験資格のみならず、臨床心理士受験資格を取得することが可能です。
 この臨床心理学領域においては、臨床心理学を中心に据え、後述の心理教育・相談センターでの検査やケース担当を中心に学外施設の実習を追加する養成体制となっており、実践と研究を行き来しながら学びを深めることを方針としています。一方、心理学領域では基礎心理学や教育・発達心理学による人間理解を基礎に、実践人間科学領域では多様性社会実践や対人援助実践、社会心理学実践による社会課題への理解を基礎に、公認心理師として必要な知識を身につけ、多様な学外実習施設における実習経験を積み重ねる養成体制をとっています。このように、各領域の公認心理師コースでは独自性を活かした心理臨床家の養成が行われています。
 多様な交流の中での学びも立命館大学における心理臨床家養成の特徴です。3領域のそれぞれが独自のカリキュラムを展開していますが、前述のように各領域に公認心理師コースがあり、多くの対応科目を共有している他、異なる領域の学生が同じ学外実習施設に実習に行くこともあり、領域を超えて切磋琢磨することができます。加えて、領域を問わず教員や大学院生同士の意見を交換するアライアンス制度をはじめ、交流の機会が豊富にあります。このような体制は、心理臨床家として必要とされる多様な視点を身につける上で重要な機会を提供するものとして位置づけています。

学内・学外実習

 学部においては、4回生に配当される科目において学外実習を体験します。学外の実習施設は、医療機関を中心に教育機関、矯正施設、放課後等デイサービスなど多岐にわたります。大学院においても、1回生より病院を中心とした医療機関、小・中学校、子ども家庭相談センター、企業、放課後等デイサービスなど多様な領域・分野の施設で実習を行います。特徴的なのは、一部の施設においては学部と大学院の両方で実習を行うことができる点です。多くの場合、学部では見学のみとなりますが、学部における経験や知識を踏まえ、大学院で参加型の実習を経験することができ、段階的に実習体験を深めることができます。
 さらに臨床心理学領域では、入学直後の5月から学内実習施設での電話応対や来談者対応といった基礎実習を開始します。夏からは面接の陪席や実際のケース担当へと段階的に移行し、早期から臨床実践の学びを深めていく体制を整えています。なお、臨床心理学領域では、学内・学外施設の両方でバランスよく実習を行う体制ですが、心理学領域・実践人間科学領域では学内施設における実習はなく、その代わりにより多くの領域・分野、長い期間、学外施設にて実習を行う方針とし、それぞれの養成上の特徴が反映されています。

心理教育・相談センター

 学内実習施設である心理教育・相談センターの業務は、センター長、主任カウンセラー、臨床実習教育担当嘱託講師2名、カウンセラー3名、事務職員により行われています。臨床心理学領域の大学院生も実習相談員として運営に携わります。
 実習相談員がケースを担当する場合は、ケースごとにセンター教員・カウンセラーがスーパーバイザーとして指導することになっており、複数のケースを担当する場合は、大学院生が多角的な視点を得ることができるよう様々なスーパーバイザーの指導を受けられるよう配置します。また、原則として研究指導を受ける教員とは別の臨床家から臨床指導を受けられるようにしています。
 多くの支援機関で電子カルテが導入されているように、センターにも電子カルテが導入されており、その使用のトレーニングを受けることができます。加えて、オンラインカウンセリングも導入され、専用のブースを複数設置し、学内外の専門家からオンラインカウンセリングのスーパービジョンを受けることができる体制も準備しています。さらに、地域の実情に添って、17時~20時の夜間開室も開始しています。
 このように、心理臨床家としての基礎的標準的な指導を主軸としつつも、社会的要請や地域のニーズに沿った支援の実施とその指導体制を整えるよう、日々取り組みを深めています。

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