特集01: 心理臨床と発信 心理職を目指す高校生への支援プログラム―― 令和7年度静岡県公認心理師協会「心理学の学びと心理職のお仕事」
著者 静岡県公認心理師協会 中川雄真・上野永子
「心理学の学びと心理職のお仕事」とは
2025年6月22日、静岡県公認心理師協会総会・大会において「心理学の学びと心理職のお仕事」と題した企画を静岡県教育委員会、一般社団法人日本臨床心理士会、公益社団法人日本公認心理師協会の後援を得て開催いたしました。本企画は、心理学や心理職に関心を持つ高校生を主な対象としたプログラムであり、高校生の進路選択支援の場として企画されました。
当日の参加者は78名(高校生37名・保護者29名・教員7名・大学生4名・社会人1名)で、はじめに大学教員より大学・大学院における心理学の学びについてのレクチャーがあり、その後はさまざまな領域で働く心理職より、その仕事の内容と魅力についての講演がありました。
大学・大学院での心理学の学び
本企画の前半では、「心理学の学び」と題して、公認心理師養成課程が整えられている大学や大学院の先生方にご登壇いただき、どのようなカリキュラムが準備されているのか、あるいは、将来心理職となるためにどのような知識やスキルを育んで欲しいのかについて分かりやすくご説明いただきました。高校生にとって、大学での専門的な学びは想像しにくい部分があることと思います。また、心理職を目指す高校生にとって「心理学」といえばカウンセリングや心理テストといった臨床心理学を学ぶイメージが強くなりがちです。しかし、本企画ではさまざまな心理学の学びについて取り上げ、心理学が人の心を幅広く理解し、支える学問であるということが具体例とともに紹介されました。参加された方々がうなずきながら真剣な眼差しで耳を傾けている姿が印象的でした。
心理職の仕事の実際
本企画の後半では、「心理職のお仕事」と題して、5つの異なる専門領域(医療領域、福祉領域、学校領域、私設・産業領域、司法領域)で活躍する心理職の方々にご登壇いただきました。
医療領域では、外来やデイケアに関する話題のほか、多職種連携に関わるお話をしていただきました。医療現場では一つの職種が単独で活動するのではなく、複数の職種が協力し合って患者さんをサポートすることが重要であると参加された方々に十分に伝わったことと思います。
福祉領域では、高齢者への神経心理学的検査や認知症の患者さんとの関わり方についてお話をしていただきました。近年の少子高齢化に伴い高齢者支援は喫緊の課題になっておりますので、心理職としてどのような支援が重要かを学ぶ機会は高校生にとって得難い経験になったことと思います。
学校領域では、スクールカウンセラーとして生徒と関わるだけでなく、保護者や教員との関わりが必要であることをお話いただきました。今回参加された高校生の方々にとってはまさに自分と同世代に対する心理職の働き方となりますので、自身の体験を振り返り、重ね合わせながら聞かれていた方が多かったように思います。
私設・産業領域では、メンタルヘルス研修や従業員支援プログラムについてお話いただきました。心理職として社会人をサポートするに際し、カウンセリングのみならず、様々なサポート方法があるのだと視野が広がったことと思います。
司法領域では、法務技官として少年鑑別所での心理職の役割についてお話いただきました。おそらく多くの高校生にとっては未知の世界の話であったからこそ、知的好奇心を刺激するような、素敵な学びの時間になったことと思います。
また、ご登壇いただいた方々には共通して、心理職の魅力や、働く上での難しさについて語っていただきました。本を読むだけでは分からない等身大の心理職の現状を知る、大変貴重な機会でした。
養成校の教職員と語る個別相談会
本企画の最後には、当日ご登壇いただいた方々を含め、静岡県内で公認心理師養成課程が整えられている大学や大学院の教員、および、実際に各領域で活躍されている心理職の方々が対応する個別相談会が実施されました。それぞれ担当者が個別ブースを構え参加者一人一人に丁寧に応じ、本企画内で話された内容や参加者の個人的な相談まで幅広く対応いたしました。より身近に心理学・心理職を感じていただいたことと思います。本個別相談会では「心理学をきちんと学んでみたい」と話された参加者もおり、個別対応の時間を設けて良かったと心から思った次第です。
アンケート結果より
静岡県公認心理師協会にとって本企画は初の試みであり、開催準備には多くの苦労や不安がありましたが、参加募集を始めると、早々に当初定員の80名を超える参加希望者が集まりました。これらのことから、高校生の心理職に対する関心の高さがうかがわれました。
本企画に対する参加者の感想アンケートは軒並み高評価であり、プログラム後のアンケートでは、「大学・大学院での学び」については94%、「心理職のお仕事」については98%が「とても満足」「満足」との回答でした。また、自由記述からは、「心理職がいろいろな現場で活躍することは知っていましたが、内容までは知らなかったので、やりがいや大変なことも含め、知ることができてよかったです」「心理学を学んだ後の出口がわからなかったが、様々な分野で活躍できることがわかった」「心理職を学びたいと言う娘の希望があって参加しました。私自身、イメージが掴めずいたのですが、今回のお話を聞けて大変参考になりました」といったコメントが多く寄せられ、本企画により、心理学の学びが心理の仕事につながるイメージを具体的に掴んでいただけたことと思います。
心理学を学ぶということの意味
本企画は単なる高校生の進路説明会に留まらず、「人の心を学ぶ」ということが、社会でどのように活かされ役立っているのかを、包括的に、そして身近なものとしてお伝えする大変有意義な機会であったと感じています。
参加された方々は、心理学の面白さだけではなく、現場で求められる責任や心理職として生きていく葛藤についても触れ、熱心に話を聞かれておりました。本企画に参加された方々が全員心理職を目指すことはないと思いますが、「人に関心を持ち、寄り添おうとする」心理職の在り方が、いかに社会で必要とされているのかを実感していただいたことと思います。