「トラウマ」(心的外傷)を受けた人は、個人の心的外傷の質により、世界観が変容し、生活上の困難が生じます。当事者は、混乱に晒された日常を送っている可能性があり、支援者から当事者に起きる可能性がある状態像、回復の過程や方法、自己防衛である自分の守り方等、を整理しその見通しを伝達する必要があります。説明伝達する心理臨床の機能を、心理教育と呼んでいます。

「トラウマ」(心的外傷)の症状や状態像についての心理教育

 個人が「トラウマ」(心的外傷)を受けた時に、現象として起きる可能性があることを述べます。生命を危ぶむような圧倒的な「トラウマ」(心的外傷)や、発達の中で持続的に虐待等の「トラウマ」(心的外傷)を受けた際、脳は、個人の生存を優先しその「トラウマ」(心的外傷)となる強烈な体験を切り離す、解離という原初的防衛機制を発動します。平易な言い方では、感覚、感情を感じない、自分はその場にいない、この記憶はないことにする、等の無意識的な作用がおきます。一時的、連続的に解離という機制で生命を守ったはずの脳内には、後日、後年加害者と離れた後、解離という切り離しによって起きる後遺症、解離症状が起きてきます。当事者の後遺症である解離症状は、過去に経験した「トラウマ」(心的外傷)が身体に作用してこびりつく為、「トラウマ」(心的外傷)と類似の状態像の引き金刺激で発生します。視覚的、聴覚的、触覚的、味覚的、嗅覚的、五感等に類似で似通った状況依存的な刺激を経験した際、目の前に加害者が存在しないのに、苦痛を伴う多種類のフラッシュバック症状が侵入します。認知的には、身体や精神に派生して、世界観の変容が起きます。自分は生きていても仕方ない、自分は一生笑えない人生だ、等の認知が歪み、感情的に圧倒されることも少なくありません。一方、これらの症状群は、脳や生命体が本来の発達や信頼できる人間関係を促進しようと、支援を求める症状として表現する正の側面です。
「トラウマ」(心的外傷)を受けることとは、何が起きているのか、どう回復の道のりを歩いていくのか、どう自分を守り続けられるか等、リラクセーションやセルフケアの伝達を含めて、その回復までの地図を伝える心理教育が必要となってきます。心理教育によって、当事者が自らに起きていることを理解し自己への信頼や慈愛を深めると留意しましょう。

周囲への心理教育トラウマインフォームドケア

 当事者は「トラウマ」(心的外傷)への心理教育の地図を得て、支援者と共に回復への道のりを歩きはじめます。一方、支援者が回復を促す段階で、周囲に地図を理解していない人間、家族成員や時に専門職との遭遇があるかもしれません。対象者の支援治療環境を整える視点が必要です。周囲にこの地図を説明して理解を得る心理教育を含む支援領域を、トラウマインフォームドケア、といいます。
 一方、丁寧に伝達しても心理教育が円滑に機能しない場合があります。仮説として、周囲の人間が被った「トラウマ」(心的外傷)や職業的「トラウマ」(心的外傷)、また解離症状を伴うPTSD症状が内在化しているかもしれません。
 チーム臨床を念頭に置き、職場内外の他の心理士や精神科専門職と役割分担等、連携をして、対象者のみならず周囲へ支援の視野を広げるための臨床の羅針盤を持ちたいものです。

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